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不意に伸ばされた奴の手が、オレの頬にそっと触れた。優しく撫ぜる指先の感触に、うぶ毛が逆立つ。こそばゆさと恐怖に思わず身を竦めると、そんなオレを嘲笑うように、九重は口端を吊り上げて笑みを深めた。
それはゾッとする程嗜虐的で、やけに妖艶な表情だった。
どうして、こうなった。心中で繰り返す、何度目かの自問自答。現実逃避に過ぎない思考。
――オレは一体、どこで間違えたんだ?
記憶のノートが、ぱらぱらと捲れていく。これまでの出来事。今日の最初の一ページ。
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齢十七にして、オレは悟った。世の中には二通りの人間がいるということを。
ずばり、『神に愛された人間』か、『そうでない』かだ。そして、オレは当然の如く前者だと思う。
「トキ~! 今月の『艶☆DAN』見たよ~!」
「超カッコ良かった~!」
オレの登校を待ち構えていた同級生女子達が、朝一に廊下で周りを取り囲んだ。彼女達の手には、オレが紙面を飾ったメンズ雑誌が握られている。
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