8-10 傍に居たい。

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 暫しの沈黙の後、親父は静かに告げた。 『……厳しくするぞ』  その言い方が何とも親父らしくて、オレは自然と口元を綻ばせていた。 「望むところだ」    ◆◇◆ 「話は済んだのか」  終話ボタンを押すと、九重が控えめに訊ねてきた。 「ああ。これから親父に生け花のレッスン週一で付けてもらうことになった」 「また忙しくなるな」とぼやくと、九重はオレをじっと見上げて、「でも、楽しそうだな」と仄かに口元に笑みを刷いた。 「そうだな。ちょっと楽しみかも」  ようやく、親父と分かり合えた気がした。じわりと胸に温かな熱が広がるように、嬉しさでいっぱいになる。 「ありがとうな」 「何が?」 「お前のおかげだから」  九重はキョトンとした。それが何だか可愛く思えて、頭を撫ぜた。 「うわ、熱っ!? そうだお前、熱あるんじゃん!」 「ああ……ちょっと、クラクラするな」  申告すると、電池が切れたみたいに、ふぅっとベッドに沈み込み目を瞑る九重。やべ、めっちゃ喋らせちまったもんな。無理させ過ぎたな。  聞いてしまった九重の事情。
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