8-10 傍に居たい。

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 親父に見放されたかもと思った時、オレは凄く心細くて悲しい気持ちになった。――コイツはそれを、ずっと味わい続けてきたんだ。  もう、そんな想いさせたくない。  あの夜にも誓った。オレじゃ足りないかもしれない。だけど、オレの存在が少しでもコイツの孤独を和らげることが出来るのなら――傍に居たいと、改めて思った。 「お前、もう休んどけ。飯は食えるか? これから用意するな」 「……ん」  九重は今一度そっと瞼を開き、こちらを見上げるとふわりと微笑んだ。 「良かったな……花鏡。親父さんとのこと」  それは、いつか見た優しい笑顔で。……胸が騒いだ。喉の奥まで一緒に、きゅうっと抓まれたみたいに切なくなる。  ――お前、自分は親のことで辛い想いしてんのに、オレのこと、そうやって喜んでくれるのかよ。  鼓動が高鳴る。嬉しいのに、何だか泣きそうで。頬が熱くなる。……おかしいな。オレ、もう熱は下がった筈なのに。  九重の柔らかい笑顔。見てるとぶわぶわ落ち着かなくて、逸らしたくなるのに目が離せなくて。ずっと、見ていたくて――。  ゴトン、手からスマホが滑り落ち、ハッとしてようやく金縛りが解けた。  パッと背けた顔が自分でもどうしようもなく真っ赤に染まっているのが分かり、オレはひどく困惑した。      【続】
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