1-1 神に愛された男

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 教室に辿り着くと、先に来ていた友人にオレは早速今しがたの出来事を愚痴って聞かせた。 「破棄されないだけ寛大な措置だろう。あと、カラコン外せって言われなくて良かったな」  そう言って苦笑したのは、風見(かざみ) 鷹斗(たかと)、あだ名はタカ。実家が近所だったから幼稚園の頃から仲が良い、いわゆる幼馴染ってやつだ。  緑がかった硬質な黒髪、栗色の瞳。浅黒い肌は生まれつきで、百八十センチ超えの高身長。(ちなみにオレは百七十五)  サッカー部のエースでガタイが良く、精悍な顔付きで割と女子にモテてる。……オレ程じゃないけどな! 「カラコンはケース保存出来るって知らないんじゃね? 鬼松オシャレに縁遠そうだし」 「かもな。……でも、俺はカラコン無くてもいいと思うんだが、お前の()」  そう言って、確かめるようにタカがオレの顔を覗き込んだ。至近距離、真正面から真摯な眼差しで。……コイツには、コンタクトレンズを透かして素のオレの色彩(いろ)が見えているんだろうか。  面食らっていると、次にタカはオレの髪を梳くように指を通した。頭を撫でられるみたいな感覚に、何だかくすぐったい気分になる。
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