257人が本棚に入れています
本棚に追加
「髪も。本来黒曜石みたいに混じりっけのない黒で綺麗なのにな。勿体ない」
「やだよ、陰気くせーじゃん。てか、子供扱いすんなし!」
むくれながら軽く手を払うと、タカは「悪い悪い」なんて全く悪びれた風もなく楽しげに笑った。
小さい頃からずっと一緒だったせいか、タカはオレのことを今でも幼い子供みたいに思っている節がある。オレのことになると、めちゃくちゃ過保護。面倒見が良くて良い奴なんだけどな。オレはもう立派な高校生だぞ!
ちなみに、このクラスは席が名前の順なので、『風見』のタカと『花鏡』のオレは近い。オレがタカの前。今も各々の席に着きながら、オレが後ろを向いてタカと話している構図な訳なんだが……。目に付くのは、タカの後ろの空席。ここの主がまだ来ていない。
始業前だ。他にも空いてる席はいっぱいあるけど、オレが気になるのはその一席に関してだけだった。
何故なら、ここにはオレの天敵が来るのだ。
そう、神に愛されしスーパーパーフェクトなオレ様にも、一人だけ敵わない奴が居る。
……いや、敵わない、じゃない! オレだって負けてない! ただ、鼻持ちならない嫌いな奴、ってだけだ!
まだ来てねーな。いつ来るんだ、なんて忌々しい気分でその席にチラチラ視線を送っていると、次の瞬間。入口の方から歓声が上がった。――来やがったな!
最初のコメントを投稿しよう!