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「花鏡の実家も金持ってるんだから、かえってあの方が自然だろ」
「そう……かもしんねーけど。そもそも、お前がオレを誘拐しなけりゃ済んだ話だろ!」
「お前の一人暮らしの理由って、家出か?」
急な話題転換に、少々面食らった。
「そう……みたいなもんかな。親父と、意見が合わないっつーか。読モになんの、めっちゃ反対されてさ」
訊いておいて九重は、「ふぅん」なんて、気の無い返事をする。何だよ!
「風呂。……お前、先に入れよ」
「へ?」
またもや唐突にとんでもないことをぶっ込まれて、オレの思考は一時停止した。
だって、風呂ってあの……スケスケの。
「いや、その……オレまだ、食休みしたいし? お前先入れよ。一番風呂は、やっぱ家主が入るべきだろ、うん」
あはは、と乾いた笑いで何とか誤魔化そうとする。風呂は正直、コイツが寝静まってからこっそり入ろうかと思ってた。もしくは、早朝、コイツが起きる前に。
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