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……しかし、ガラスは一向に曇る気配がない。は?
「何で曇んねーんだよ!?」
「曇り防止加工の特注品だ。曇ったら景観が楽しめないだろ」
「要らねーよ!! 部屋風呂に景観なんて!! 露天風呂じゃあるめーし!!」
おのれ……! 確かに、外部に面したガラス部分から見える眼下の街のイルミネーションと、星の疎らな半月の夜空は憎たらしい程に綺麗だ。一人ならゆっくり湯船に漬かりながら、ワインを片手に夜景を楽しむのもいいだろうさ。一人ならな!
てか、九重こっち見てんのか? ハッとなって、振り返る。九重はリビングのソファに座して、何かの本に目を落としていた。あ、なんだ見てねえ。ホッと胸を撫で下ろす。今の内に洗っちまお。
シャワーを出して、まずは洗髪。シャンプーから。目を閉じて指でワシャワシャ髪を洗っていると、ふと背後から視線を感じた気がして、背筋に悪寒が走った。
バッと振り向く。九重は相変わらず本を読んでいた。……気のせい、か? やべぇな、オレ意識しすぎ。
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