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苦笑してシャンプーを流し、次にリンスで同じ行程に入る。やっぱり、目を閉じてると背中に視線を感じる気がする。突き刺さるような、鋭くて、熱い視線。背筋がゾクリとした。振り向く。やっぱり九重は本を見ている。
釈然としない気持ちで再度顔を戻し、眼前の鏡に向き直ったその時――鏡面越しに、九重とバッチリ目が合った。
「おまっ……やっぱ見てんじゃねえか!!」
「バレたか」
愉しげに笑う九重。全く悪びれねえ! オレは慌てて手で前を隠しながら、勢いよく湯船に飛び込んだ。
「あ、おい。身体洗う前に浴槽に浸かるな」
「お前! ゲイじゃねーんだろ!? 男の裸なんか見て楽しーのかよ!?」
「いや、俺は野郎の裸体には興味無い」
「じゃあ、何で!!」
「俺が好きなのは、お前の嫌がる顔だ」
このド鬼畜ヤロー!! 物凄い良い笑顔で言いやがった!!
「身体は洗わないのか? 花鏡」
「お前があっち向くまで、湯船から出ない!!」
「ふぅん?」
何か企むような九重の表情。次に奴は、こんなことを言い出した。
「一人じゃ身体も洗えないのか。仕方のない奴だな」
「は?」
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