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つかつかと迷いのない足取りでこっちの方にやって来ると、九重は脱衣所を経由してオレの居る風呂場にまで入ってきた。着衣のままだ。
「なっ、何で入ってくんだよ!?」
狼狽えるオレの腕を掴んで、九重はオレを浴槽から引っ張り上げた。瞬間、横抱きに抱えられ、風呂マットの上に下ろされる。自分の服が濡れるのも厭わずの強行突破だ。
「甘えん坊のトキ坊っちゃんは、自分じゃ身体が洗えないようだからな。――俺が手伝ってやるよ」
「はぁあ!?」
むりむりむり! 何言ってんだ!? 慌てて立ち上がろうとするも、肩を掴んで押し戻される。
「逃げるな。画像ばら撒くぞ」
分かりやすい脅し文句。引き攣るオレの表情筋。
「あ、洗うだけ……なんだろうな?」
「洗うだけだ、誓って」
全く信用ならねえ!! 前回だって、似たようなこと言って全然〝だけ〟じゃなかったし!!
次の瞬間、九重がボディソープを自らの手に数プッシュしたのを目の当たりにし、オレはギョッとした。
「おい! スポンジあんだろ!? 何で素手!?」
「この方がお前が嫌がるだろう」
その通りだ、ちくしょう!!
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