1-2 天敵は同クラに潜む

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1-2 天敵は同クラに潜む

 反射的にそっちを見る。教室の扉を潜ってきたのは、案の定アイツだった。  アイツ――九重(ここのえ) (れん)。紫がかった長めの黒髪に、垂れ目がちな琥珀色の瞳。秀才然としたメガネなんて掛けてるくせに、やたら睫毛ばしばしで目立つ顔してやがる。  親は医者。家は大病院。オレと違ってちゃんと跡取り息子してるらしい、優等生くん。  実際、成績の方も優等生。学年一位で人望も厚い生徒会長様だ。まず間違いなく、コイツも『神に愛された』側の人間だろう。  性格も穏やかで誰にでも優しく、いつもニコニコ甘いマスクで、女子達の間では王子様なんて呼ばれている。  オレは身近なアイドルみたいな扱いだけど、九重は迂闊に手を出せない高嶺の華的な扱いを受けている。そのお高く止まった感じが、余計に気に食わん。  今日も王子様は群がる女子(庶民)達に向けて、爽やかなスマイルで挨拶を返している。クッソうぜえ!  何が一番癪に障るって、あの笑顔だ。皆は素敵だと褒めそやすが、オレには何だか気味が悪く感じられる。なんつーか、そう……仮面みたいで、胡散臭い。
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