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2-9 視られただけで ◆
見つめる視線の鋭さに、早くもオレは押されて目を逸らした。抗議の声を上げようとしたけど、再び「命令」の一言で黙らされる。
仕方ない、従うしかない。オレは九重がしたように、ボディソープを自分の掌に数プッシュ出して泡立たせた。それから、九重に背を向けて――。
「後ろ向くの禁止」
くそっ! 新たな追加命令に、渋々正面に向き直って座った。マットの上で、正座。だらしなく座るよりは多少ガードされるだろう。
立ち上がった九重が、上から見下ろしてくる。凄い威圧感。広さのあるシャワールームなのに、やけに距離が近く感じられる。
とりあえず、九重が洗い残していた腕から擦り始めた。あまり体勢を崩さないように、もそもそと小さい動きで。
その間も、頭上から九重の視線が降ってくる。目を合わせなくても、見られていることが伝わってくる。冷静なくせに、やけに熱く粘っこい。突き放しているようでいて、異様な執着がある。――そんな視線が、無防備に晒したオレの肌に纏わり付いてくる。
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