76人が本棚に入れています
本棚に追加
「え? あぁそっか、えっと」
明らかに不自然な返答をしてしまった私。差し出された手にそっと重ねる私の手。宗祐は髪をそっと手櫛で流すと耳元で囁く。
「約束」
そう言って耳にキスをする。
「でも、自分の髪型見てないですから」
宗祐は私の言っていることなど気にもせず、ブラウスのボタンを一つずつ外す。
「髪の毛がついてるから払ってあげる」
そう言うと、露わになった肌に吸い付きながら唇を這わす。
私の複雑な気持ちを分かってくれているのかな。頭では色んな事を考えているけど、案外体は正直だったりする。手と手を重ねたのは、宗祐を離したくないと思ったからだろう。
この先、続くかどうかも分からないこの関係に踏み入ってしまった私は、その時が来たら別れる事が出来るのだろうか。
私の聴覚も視覚も嗅覚も、宗祐を求めている。キスをした唇も抱きしめた時の背中も、全ての感覚が宗祐を求めている。
やっぱり一緒にいたい。
そう心と体で感じた。
宗祐が屈み込んで私を抱く。少しでも側に寄りたくて背伸びをする私。
もう歯止めがきかないのは分かっている。今だけは幸せな気分に浸りたいから、愛されていることを感じたいから、ごめんなさい。誰に謝ったのかわからないけど、自分の気持に嘘はつきたくない。だから本当にごめんなさい。
宗祐の香りのするベッドは嫌いじゃない。頭までスッポリと被された布団の中は宗祐の香りでいっぱいだった。
その暗闇の中で愛しい人を探す。全ての肌と肌が触れていたい。そしてお互いが離れたくないと体同士が吸い付くように密着する。
切なくも幸せな時間が私の善悪を拗らせる。
最初のコメントを投稿しよう!