真実

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真実

「え! 生きてるんですか?!」 「そうですね。亡くなった形跡がないと言うか、今も生きていらっしゃいますね」  母親は事故で亡くなったと聞いていた。そして俺は今までの出来事が走馬灯のように頭のなかを駆け巡りパニックになった。  俺は今霊媒師の所へ来ている。そして長い間触れられることの無かった問題に直面していた。  そう、産みの親が生きていた。  親父の会社に入るに当たり、身辺調査も兼ねて戸籍を覗いてみた。 「あれ? 母親芳美(よしみ)の欄に、亡くなった記載が無い」  もしかして、この事を知らなかったのは俺だけだったんじゃないかと思い誰にも相談できないでいた。そして、悩んだ末にこうして霊媒師の所へ来ていると言う流れ。 「では、やっぱり母親は生きていたんですね?」 「そうですね、戸籍は嘘は書けませんからね。この戸籍から見ると、宗佑さんが幼少のうちに今のお父様の所へ養子へ出されてますね。なのでお母様は亡くなってはいません」  なぜ死んでもいないのに養子へ出したんだ?  母親はシングルマザーだったようだが生活が苦しかったのか?  どんな理由で親父の元へ養子に出したんだ? 「宗佑さん、話の前にちょっとお聞きしてもいいですか?」 「はい」 「もし、話に進展があったとしても私の話は法廷では無力です。そこの所はご承知おき下さい」 「大丈夫です分かってます。なので全部教えてください」  この霊媒師さんは、占いも透視も除霊も出来る腕利きの霊媒師さんだ。なかなかお会いできない方だったが、たまたま予約のキャンセルがあったのでそこへ入れてもらうことが出来た。  これもきっとタイミングや運命的なものではないかと、そっち方向にいってしまう自分が乙女に見える。案外、嫌いではない。 「宗佑さんはお母様から何かを持たされていますね?」  唯一の形見だと持たされていた物、オルゴールだ。 「ご自宅に戻られたら、それを良く見てもらってもいいですか? そのオルゴールから強いメッセージが受けて取れます。  それと、あまり事を荒立てない方が良いかと思います。お父様の会社は大きいですし、後継者として波は穏やかな方が良い」  そこで時間になり退出した。最後にそれだけ念を押すように言われた。  俺は自宅に戻ると、早速そのオルゴールを引き出しの奥から引っ張り出した。
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