真実

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 自宅に戻り押し入れをあさる。バサバサ髪になったスズメちゃんとツバメちゃんを一旦テーブルの上に置く。その奥にある宝箱と書かれた箱の中にオルゴールがあった。  それを開くと、止まった時間が動き出し見慣れた物達が息を吹き返す。  色のかすれたオモチャ、小学生の頃に使っていたペンケース。どれも思い出の品だが楽しかった記憶は無い。  雑に転がるそのオルゴールを手に取った。手回しのハンドルが付いていてテンポ良く回さないと曲が聞こえてこない。しかもラベルがあるわけでもなく、何の曲が入っているのかも分からない。だからこのオルゴールは好きではなかった。  ハンドルをゆっくりと回してみる。  かすれた音が部屋に響く。  相変わらず好きになれないこの音。子供の頃は意味も分からず回していたけど、今になって理解できたこの感情と曲。それは子守唄だった。  じっくりと見てみると、振動板が一枚欠けている。だからいつも決まった音だけおかしな響をするんだな。  そうだ、バラしてみよう。  精密ドライバーで有りと有らゆるネジをゆるめた。カバーを外し振動板を外し、シリンダーまでも外した。  最後にフレームを取り外すとその下には何かがはめ込まれている。そしてガムテープで全面を覆われていた。 「何かある」  ガムテープの上から触ってみるとボコボコとしていて明らかに何かがあるのがわかる。そして端からゆっくりと剥がす。 「これは」  そこから顔を出したのは指輪だった。プラチナとゴールドのコンビでマリッジリングのようだった。  外側には何か文字があるようだが、これはもしかしたら二本重ねたら読める文字なのではないかと推測する。  内側は材質の刻印と、TtoYの文字。多分、Yは母親の芳美なんだろうな。じゃぁTって誰なんだろう?  オルゴールは繊細な機械だから、コイツのせいで響が悪かったんだな。振動板も欠けているのに、なぜ俺は今まで分解した形跡があることに気付かなかったのか? その異変を見逃していたことに悔いが残る。  俺の思考回路がそこで止まった。  後日、自分の過去について調べてみようと資料を集めた。それと平行して親父の経歴も調べた。
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