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『 ウォルト・ディズニーに会いたい 』
火山竜一
車椅子のお爺さんが入ってきました。
中学生くらいの男の子が後ろから押しています。
ミッキーマウスがお爺さんにご挨拶をしました。
お爺さんも威厳のある顔で会釈を返しました。
「お勤め、ご苦労さん。ウォルトはどこにいるのかな」
車椅子を押している男の子が遮りました。
「お爺ちゃん、ダメだよ。もうとっくに亡くなっているんだから」
お爺さんは男の子に振り返りました。
「昔、よくテレビに出ていたじゃないか」
男の子がミッキーに頭を下げました。
「ごめんなさい。お爺ちゃん、前はこんなこといわなかったのに、わからなくなってきちゃったんだ」
ミッキーマウスは首を振り、ミッキーマウスの着ぐるみの顔を外しました。
なんとウォルト・ディズニーが出てきたではありませんか。
ウォルトはお爺さんと握手をすると、また被り物をかぶりました。
ウォルトはミッキーマウスにもどると、お爺さんと男の子に手を振って去っていきました。
ミッキーマウスは事務所に戻り、業務員室のロッカールームに駆け込みました。
「く、苦しい。息ができない。着ぐるみ二つは無理だ」
ミッキーと続いてウォルトの着ぐるみを脱ぎました。
汗だくの若い青年でした。
「高齢者サービスだっていわれても、無理だよな」
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