第六話

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ドアを開けるとそこは広いお風呂場だった。大人が3人以上余裕で入れる様な大きな湯船、その隣にはガラス張りの広いシャワールーム 。洗面台もあって、大きな鏡が二つ並んでいて、まるで高級ホテルのような作りだった。 「すごっ・・・」 思わずつぶやいた言葉に彼は微笑んでいた。 「服持ってくるからちょっと待ってて」 そう言い残して彼はお風呂場を出た。 僕は少し周りを見て回ることにした。 洗面台にはなんだか色んなボトルが並んでいて一つ手に取ってみると、なんだか高そうな化粧水の様なものだった。なるほど、ここに並んでるのはお肌整えるものなのか。彼意外と美容に気をつけてる人なんだなぁ・・・ 湯船に近づくと隣にボタンがついていた。なんだろう?このボタン。追い焚きのボタンなのかなぁ? 悩んでるうちに彼が戻ってきた。 「あの・・・」 「ん?」 「このボタンって・・・なに?」 「あぁ、それか、後でのお楽しみな」 ん?お楽しみ?なんだろう? 「とりあえず服脱ぎな、おいで」 「・・・・・・・・・ここで?」 「うん、ここで。あぁ、気になるならタオル渡すから、腰に巻いて。俺後ろ向いてるわ」 彼は僕に小さめの白いタオルを渡してそのまま後ろを向いた。 うん。これはやっぱ恥ずかしい・・・うーん・・・男は度胸だよね・・・なる様になるか。 僕は急いで服を脱いで腰にタオルを巻いて、脱いだ服を集めて抱えた。 「脱いだよ・・・服どうしたらいい?」 彼はゆっくり振り向いて目があった瞬間時が止まったかの様に固まった。でもすぐ僕の脱いだ服を手に取って返事をしてくれた。 「えっと・・・服は脱いだらここのカゴに入れといて、クリーニングに出すから」 「うん」 「まず身体洗おうか」 「・・・え?いや・・・その・・・自分で出来る」 「ん?気にしないで、うちのシャワーちょっと特殊だし、どこに何があるかわからないでしょ、おいで、変なこと何もしないから」 確かにあのシャワー室の使い方はちょっとわからなさそう。 僕は大人しくシャワー室に入った。 彼が端っこに置いてあった椅子を持ってきて、僕を座らせた。 「ここを捻って温度の調節ができるよ、ここのレバーを引くと普通のシャワーからレインシャワーに変えられるよ。今日はレインだと俺も濡れちゃうから普通のシャワーにするね。ボトルは左から順にシャンプー、リンス、ボディソープ。下の方にあるのが洗顔料ね」 レインシャワーなんて初めてみた。文字通り雨みたいになるのかな? 「じゃぁ、頭洗うね」 彼はそういうと自分のシャツの袖を捲り上げてシャワーのお湯を出し始めた。 「服・・・脱がないの?」 「んー?今日はね、ひなを洗うことに専念したいな、ダメかな?」 うぅ・・・そんなしおらしい顔で見ないでよ・・・なんかずるい気がする。 「ダメじゃないけど・・・」 「ダメじゃないならいいんだ。この温度で大丈夫?熱くない?」 彼は僕の足元にお湯をかけて温度を確認してくる。マメだなぁ・・・そんな丁寧にしなくて良いのに。 「うん・・・大丈夫」 僕はお風呂を1人で入ることが少なかったから、特に違和感なく頭を洗われることを受け入れられた。母とは違った大きな手で丁寧に洗われるのが気持ちよくて、上を向きながら目を閉じた。 「気持ちいい?」 「んッ・・・気持ちいい・・・すごい・・・上手」 「・・・・・・・・・うん、そうか。よかった。痒いところないか?」 「ちょっとうなじの上が痒い」 「ここ?」 「んッ!そこ・・・」 「・・・これは・・・思った以上に苦行だな・・・」 「ん?・・・なんか言った?」 頭をワシャワシャと洗われている音で彼が何て言ったのか聞き取れなかった。 「ううん、なんでもないよ、もう痒くない?痒くないなら流すよ」 あぁ・・・すっごく気持ちいい・・・プロの美容師さんに頭洗ってもらってるみたい。強すぎず弱すぎない刺激で頭皮を優しく洗ってくれる・・・なんだかクセになりそう。 しっかりとリンスをして、流して次は身体って時になって僕は初めて緊張した。どうしようかと悩んでいると、 「背中洗うね、他は自分で洗える?」 「うん」 よかった。全身洗われたら流石に恥ずかしい。 彼が僕にモコモコの泡と柔らかいタオルを渡してくれて、僕は素早く身体を洗った。 「んんダメッ・・・そこ!・・・くすぐったい」 彼は素手で僕の背中を洗ってくれているみたいだけど、腰のあたりをツーっとなぞられてゾワゾワとした感覚がくすぐったくて思わず抗議した。 「ふふっ、ごめんね。ひなは敏感なんだね」 うーん・・・そうなのかな? 「わかんない・・・人と比べたことない」 「そっか、洗い終わったかな。流すよ」 「ん」 全身流し終わって、僕は再度腰回りのタオルを巻き直した。濡れたタオルがペタッと肌に張り付いて気持ち悪いけど、恥ずかしいから我慢だ。 「冷えちゃう前にこっちおいで」 僕はシャワー室を出て言われるがまま慎重に湯船に浸かった。ちゃんと中に段差があって座れる様になっていた。確かに座る場所ないとこんな深い湯船だと溺れちゃうよね。 どうやら入浴剤が入っているみたいで、フローラルな香りが漂っている。 「ひな、このボタン押してみて」 あ、さっき気になってたボタンだ。 「いいの?」 「うん、押して」 恐る恐る銀色のボタンを押すとゴーという音と同時にジャグジーになった。 「うわっ!すごい!」 初めてのジャグジーにテンションが上がってしまって思わず笑みが溢れた。
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