第十六話

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第十六話

僕はすぐお風呂場に入り、スミの話通りお尻の準備をするためにズボンを脱いだ。 暑くて煩わしく感じる服を全部脱ぎ捨ててようとして何故か上手く身体のバランスが取れない。地震?っていうわけじゃないみたいなのに、片足立ちが出来ない。 仕方なく僕は湯船に腰掛けてゆっくりズボンを脱いで目的のシャワー室に入った。 お湯の出るハンドルを回すとザーっとシャワーヘッドじゃなく、天井から降ってきた。 「うわぁ・・・雨みたい。でもシャワーヘッドにしたいんだけど・・・」 さて、どうしよう。 一旦シャワーを止めて色々観察すると銀色の丸いボタンがあった。ポチッと押してもう一回ハンドルを回すと今度はちゃんとシャワーヘッドからお湯が出た。 あれ?シャワーヘッドを外してお尻に入れればいいのかな?クルクルっとヘッドを取って、勿体無いけどお湯を出したまま待機させる。 お尻なんて、トイレで拭くときと体洗うとき以外触らないからなぁ・・・なんて思いながら自分の人差し指でツンと穴を触った。 思った以上にぎゅっと硬くて、こんなところに指なんて入るわけないし、ましてやどうやってお湯入れるの???? 一瞬にして怖気付いてしまい呆然と立ち尽くしてしまう。 いやいや、弱音言ってる場合じゃない。意を決して人差し指より細めの中指を穴に入れようと穴の縁をなぞったけど、ゾワゾワっとしたなんとも言えない不快感に逆に力が入ってしまい侵入を拒まれる。 うーん・・・僕才能ないのかな・・・シャワー室から出てさっきの箱の中に入ってるローションを持ってもう一回挑戦する。 指とお尻にローションをつけてさっきみたいに中指を入れようと奮闘する。無意識に力が入ってしまうから頑張って意識を逸らして深呼吸して息を吐く。 「んっ!」 ローションの滑りでスッと第一関節まで入ったけど・・・違和感しかなくて、この後どうしたらいいのかわからない。シャワーをお尻に当ててお湯を入れようにもお湯の侵入を拒んで入らない。 どうしよう・・・一旦シャワーから出ようか悩んでいるとお尻から垂れたローションで思いっきり滑った。 ズルッゴン! ド派手な音がした直後、肩に痛みが走る。 うぅ・・・痛い・・・ コンコンコン 「陽太様???スミです、今すごい音がしましたけど大丈夫ですか?」 「うぅ・・・ぅ」 「すみません!開けます!」 ガチャっという音と同時にスミがお風呂場に入ってきた。裸でシャワー室に横たわっている僕を見つけると青ざめた顔で駆け寄ってきた。 「陽太様!!!大丈夫ですか???何処ぶつけました??」 「肩・・・」 「頭はぶつけました?」 「ううん」 「今すぐタオルとバスローブ持ってくるので、ちょっと待っててください」 スミはそれはそれはものすごい速さでバスタオルとバスローブを持ってきて打った方の肩を触らないように僕を起き上がらせてくれた。 「あ・・・自分でやる・・・」 バスタオルを受け取ろうとスミに手を伸ばすと、 「すぐに終わりますので、任せてください」 有無を言わさない目力に負けた僕は恥ずかしいけど大人しくタオルで全身を拭かれた。シャワー室の中、全裸ですっ転んだのを見られてるから恥ずかしがっても今更感あるよね・・・ あっという間にバスローブを着させられて、寝室に向かおうとすると、急に地面から足が離れた。 「うぇっ?!?!?!」 「陽太様やっぱり熱出てます。今足元おぼつかないのでは?今すぐ医者を手配いたしますので、寝室にお連れいたします」 「は・・・はい」 大人しくお姫様抱っこされて寝室に連れて行かれた。 「今医師を呼びますので、このお水を飲んで少しお休みください。医者が来たら起こしますので」 「・・・ん・・・ありがと・・・」 あー・・・僕熱出てたんだ?だから服脱ぐ時もバランスがうまく取れなかったんだな。 スミは僕に毛布をかけると直ぐに寝室を出て行った。 あぁ・・・頭がガンガンする。本当は僕・・・ただお尻を綺麗にする練習がしたかっただけなのに・・・なんでこんなことになっちゃったんだろ。大事にしちゃって、さっきまでやってたことが彼にバレたら僕・・・どのツラ下げてここにいればいいのかな・・・ 今更ながら恥ずかしい。 僕お尻の才能ないのかな。さっきも指上手く入らなかったし・・・ 考えれば考えるほどグルグルとドツボにハマっていく。 暫くして、首から聴診器をかけた30代ぐらいの男性がスミと入ってきた。 「初めまして、陽太君、私は医者の石川俊介(いしかわ しゅんすけ)と言います。ちょっと診察させてね」 医者の人が僕の体温を測って、胸の音を聞き、あーと口を開き、喉を見終わってからゆっくり口を開いた。 「陽太君、細川さんによるとさっきお酒飲んでたみたいだけど、気分悪かったりしない?」 「・・・お酒?・・・飲んでませんけど・・・」 お酒なんて身に覚えがなさすぎる。 「陽太様、多分そのリンゴジュース、お酒です」 ベットの隣に置いてある缶を指差してスミが言った。 「え・・・ほんと?・・・」 「お酒って知らなかったんだね、多分陽太君は酔っているのと多分疲れで今熱が出てるんじゃないかな?」 「そう・・・ですか。でも僕何も疲れることしてないですよ」 「君は最近来たばっかって聞いたよ。色々と環境が変わって思いの外気を張ってたんじゃないかな?だってここヤクザの家だしね?」 そっか。そうなんだろうか? 「さっき肩を打ったって聞いたけど見せてもらってもいいかな?」 僕は大人しくバスローブに手をかけて上半身を出そうとしたらスミに止められた。 「陽太様、肩だけでいいですよ。上全部は脱がないでください」 「あ、はい」 バスローブから肩だけ出すと、思いの外強く打ったみたいで痣ができていた。少し押したり肩を動かしたりして、先生が口を開いた。 「こっちは打撲だけだと思う。痛みが強くなったりしたらまた呼んでね。それにしてもお風呂場で転ぶなんて危ないね、なんか他にしてた?」 お風呂場で後ろの洗浄をしようと思ってたなんて言えるわけもなく、羞恥心で顔がブワッと赤くなるのを感じる。 「あー・・・うわぁ・・・これは・・・中々」 「・・・・・・・・・」 「医者だから守秘義務あるし、困ってることあるなら聞くよ?」 そうだけど・・・お医者さんなら詳しいのかな? 「・・・誰にも言いません?」 「言いませんよ」 僕は思い切って聞くことにした。 「男の人同士はおし・・・アナルを使うって聞きました。その内身体の関係も持ちたいと言われてるから・・・その・・・お尻を綺麗にする練習をと思ってお風呂場でやってたんです。でも・・・指も上手く入らないし、僕って才能ないんでしょうか。僕にあるのはこの身体だけ・・・出来ることは彼が帰ってきた時に癒し?を与えるのとセックスだけなのに・・・それなのに全然上手くできなくて・・・そのせいで捨てられたらどうしよう・・・・・・うぅ・・・ふぅ・・・いやだぁ・・・っうぅ」 話しながら両手でこぼれ落ちて来る涙を拭っていたら物凄くドスの効いた低い声が寝室に響いた。 「おい・・・どういうことだ?」 声からの威圧が物凄く、思わず身体がビクッと反応してしまった。 ヤバい・・・さっきの話聞かれたかもと思ったらおかえりの言葉も喉が引き攣って出てこない。思わず固まっているとスミが寝室から追い出してくれた。部屋の主人なのに申し訳なさで潰れそう。 「えっと・・・陽太君大丈夫?」 「・・・はい」 「多分会話聞こえてなかったと思うから大丈夫だよ。で、アナルセックスだったよね、才能ないと言うよりはこればっかりは開発がものを言うからゆっくり時間をかけて慣れていけばいいと思うよ。だってそもそも何かを入れる場所じゃないから、違和感あるのは当たり前だし、これは若に相談したほうがいいと思うよ。もっと自分を大事にしなさい。 兎に角、病人はゆっくり身体を休めることが仕事です。何事も焦るといいことないから、わかった?」 「・・・はい、おっしゃる通りだと思います」 「じゃぁ、横になって休みなさい、薬はお酒が抜けてから飲むように。とりあえず私は若と診察結果を話してきますよ」 「はい・・・」 布団に潜り込んで、枕に顔を押し付ける。 「はぁ・・・」 思わずため息が漏れる。色々やらかしてるなぁ、僕。とりあえず熱下げないと何も始まらない。早く寝よう。 目を閉じれば、思いのほか直ぐに眠りが訪れた。
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