第十七話

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第十七話

「・・・っな・・・ひな・・・」 「・・・ん〜・・・」 「ひな、起きて、今空きっ腹だからなんか胃に入れてから本格的に寝な」 「・・・ん?・・・」 パチっと目を開けると目の前に人の顔が。 「にゃっぁっ!!!」 びっくりして思わず変な声が出てしまった。 「何それ・・・可愛い声。おはよ。まだ熱少しあるね、食欲あったら少しでもおじや食べて欲しいんだけど」 「え?あ・・・うん。おはよう・・・食べる」 身体を起こそうとするとスッと彼が腕を僕とベットの間に差し込んで支えてくれた。こういうのがさっとできるのって凄いなぁなんてぼーっとした頭で考えていると、肩を見せてくれと言われた。 僕はバスローブを少し脱いで肩を彼に見せた。 ちらっと自分で見てみると一部紫色になっていて見た目が痛々しい。 「ちょっと冷たいかも、湿布だけ貼らせて」 彼は壊れ物を触るかのような力加減で綺麗に湿布を貼ってくれた。 「見た目ほど痛くないから・・・そんな顔しないで・・・」 彼はずっと眉間に皺を寄せて僕の肩を見つめていた。 「いや・・・色々と・・・すまなかった」 「へ?」 唐突に始まった謝罪の意味がわからなくて変な返しをしてしまった。 「急に連れてきて・・・ほとんど拉致監禁みたいな生活させて・・・下心見え見えで・・・こんなおっさんに抱かせて欲しいなんて言われて連れてこられたのに・・・いや・・・あぁ・・・もう・・・色々とごめん」 「・・・・・・」 え・・・いや、ものすごく今更感が・・・ってかついてきたの僕だし・・・なんでこの人こんなにしょげてるの・・・ 「・・・着いてきたのは僕の意志だよ・・・なんで謝るの」 「・・・物凄く俺好みの子が目の前にいて・・・舞い上がってて・・・色々と見えてなかった。思い返してみれば、もっと他にやりようがあったと思う・・・んだ」 「・・・例えば?」 「こう、もうちょっと仲良くなって・・・お互い知ってから・・・・・・」 「それだと僕が家から離れたがってたのに、時間かけて仲良くなりましょうってこと・・・?」 「あ、いや、そうなんだが・・・」 「・・・僕特にそれに関して不満に思ったり・・・はしてない・・・不安に思うことはあったけど・・・」 「石川に言われた。正直かなりストレス抱えてるんじゃないかって・・・この環境が悪いのか・・・それとも俺なのか・・・」 「え?ストレス?あぁ・・・不安に思うことはあるよ?えっと・・・その・・・エッ・・・エッチちゃんと出来るかとか・・・すぐ捨てられたりしないかとか。でも・・・僕のことはそんな心配しなくても・・・大丈夫だよ?」 「すぐ捨てたりって・・・」 「だって僕ペットみたいなものでしょ?多分だけど。愛でられてればいいって・・・最初言ってたけど・・・癒やしって何すればいいかわかんないし、じゃぁ分かりやすく最初に言われたみたいに身体の・・・その関係を持てば僕の存在意義はちゃんとあるのかなと思って・・・後ろの準備とかも頑張ったけど・・・全然出来なくて・・・」 「は?え?・・・はっ??」 「今日気分良くなってたから・・・まぁお酒だったみたいだけど・・・お風呂場で後ろの洗浄やってみようと思ったけど出来なくて・・・才能ないんだって落ち込んでたらローションで滑って肩打った・・・これでお尻の才能なかったら確実に放り出されると思って・・・どうしようって焦ってた・・・」 「・・・・・・・・・」 「やっぱり捨てる?僕のこと」 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・才能無いなりに頑張るから・・・エッ・・・エッチも頑張るから・・・す・・・捨てないで欲しい・・・と思ってる」 彼は一言も喋らずに固まってる。やっぱり無理なのかな。僕は思い切って彼の手に僕の手を重ねた。 「やっぱりダメ?」 「・・・・・・・・・」 返事がない・・・。どうしよう。 「・・・・・・ってうぇ??????はっ!!!鼻血出てる!!!!!」 彼の鼻からは見事なまでの立派な鼻血が出てきてて僕は慌ててベットサイドに置いてあったティッシュを数枚とって彼の鼻に当てる。 「ちょっと!鼻血出てるってば!!!拭いて!!!大丈夫??!!!」 全く動こうとしない彼に焦って大きな声を出してしまった。 「陽太様!どうされましたか!!」 僕の声を聞き取ったスミが凄い勢いで寝室に入ってきた。 「スミ!!鼻血が!!!」 「鼻血??若様、何やってるんですか」 「動かなくなっちゃったの!そしたら鼻血出てきて!!どどどど、どうしよう」 「若様、失礼」 バシッーーーーン 「「えっ?」」  「正気に戻られましたか。鼻血が出ているので自分で拭いてください。では、私はこれで」 そう彼に言い渡してスミはさっさと寝室から出て行ってしまった。今かなりな勢いでビンタしたよね???痛そう・・・でもお陰で彼が再起動したみたいだ。 とりあえずティッシュを追加で彼に渡した。 「はい・・・ティッシュ」 「あぁ・・・ごめん・・・一瞬飛んでたわ」 「・・・ごめんなさい」
 「・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・とりあえず俺がひなを捨てることはないよ。不安にさせてごめんな。その、アナルの方は大丈夫。俺が一から教えるから・・・そんな急に突っ込んだりしないから安心してくれ・・・」 「・・・う・・・うん」 「あー・・・もう可愛いな、ひなは。とりあえず俺特製のおじや食べて、元気になってくれ」 「うん」 彼が何処からか持ってきてサイドテーブルの上におじやが乗っていて、ホカホカの湯気が立ってて美味しそうだった。忙しいのにおじや作ってくれるなんて、有難いなぁ。出汁の匂いで一気に食欲が湧いてきた。 フーッフーッ 「はい、あーん」 何も躊躇することなくフーフーしてあーんしてくるんだけど・・・でも美味しそう。 パクッと口にしたら思いの外自分はお腹すいてたみたいで、おじやが身体に染み渡るのを感じた。 そのまま雛の餌やりみたいにパクパクと食べて完食した。 「ふぅ・・・ご馳走様でした。美味しかった」 「よかった、ちゃんと完食できたね偉い。熱は・・・あれ?大分下がってるみたいだね。じゃぁ、解熱剤は少し様子見しようか」 「うん」 「じゃぁ、歯磨いて寝ようか。洗面所一緒に行くよ」 ベットから降りようとしたところ、膝裏に腕が差し込まれてそのままお姫様抱っこに。 「歩けるよ」 「いいの、抱っこさせて」 大人しく洗面所まで連れてってもらったけど、歯磨きも彼がすると言い始めたので、断固反対したら渋々一人で磨かせてくれた。 ショコショコと歯磨きの音がする中、彼はずっと僕の髪の毛をいじっては肩に頭を埋める行為を繰り返していた。偶に凄い息を吸ってる音がするけど、いいや、気にしない気にしない。 一通り歯磨きが終わってまた寝室に連れて行かれた。 「はい、ちゃんと布団被って。寝るまで一緒にいるから」 彼は布団の隙間から入り込んで自然と僕に腕枕を差し出した。 あまり重くないようにとゴソゴソベストポジションを探していたら、ふと彼からいつもと違う匂いがした。今のお風呂場にあるやつとも違う匂い、外でお風呂入ったのかな。フローラルで甘ったるい匂いは、あまり彼の印象には合わないから家のやつと統一すればいいのに、と心の奥底で思った。 トン・・・トン・・・トン まるで小さい子をあやすかのように彼は僕の背中をリズム良くトントンしてくれた。最初はこんなの寝れるわけないじゃんなんて思ってたら、人肌と一定のリズムですぐに眠気は訪れた。
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