指輪と眠ろう

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前夜祭だと奮発したカニ鍋に舌鼓を打った後、静かに日付が変わるのを待つ……はずがなく、広実は饒舌に喋り倒した。 「指輪買うのもさ、コンビニくらいの手軽さが欲しいよな。あんな畏まった場所、疲れる。それにあの、えげつない品揃え。買う方の身になってみろ、悩みすぎて頭痛がしたぞ。もっと数を絞るべきだよな、だいたい」 蓮が気に入った、ストレートデザインのプラチナリング。 『これがいい』と言った蓮に、もちろん広実が反対するはずもなく、無事 指のサイズも測ってもらった。 幸運なことにリングの在庫もあって、広実を担当していた店員さんが、弾けるような笑顔で二つのリングケースが入った紙袋を渡してくれた時は嬉しかった。 あんなお洒落な場所が大の苦手の広実が、一大決心をして…… 相変わらず 照れ隠しで意味不明な話を続ける広実の横顔を眺めながら、指輪を交換できるだけでも充分満足で ただこの人の傍にいることが幸せなんだと蓮は気づく。 ーーもうすぐ、二人の誕生日だ。
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