指輪と眠ろう

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日付を跨いだ瞬間、狭い部屋が急に静かになる。 いつものように賑やかな誕生日を迎えると思っていたから、具合でも悪くなったのかと広実を覗き込んだ蓮の目の前で、いきなりリングケースの蓋が開けられた。 「蓮」 大好きな人が、自分の名前を呼んでいる。 「誕生日おめでとう」 広実はそう言って蓮の左手をとり、艶々と銀色に光る指輪を薬指にはめた。 初めてのヒヤリとした感覚と、いつまでも離れない二人の手。 蓮は息を止め されるがままになる。 「生まれてきてくれて、ありがとう。俺と出会ってくれて、ありがとう。これからもずっと、傍にいてください」 ゆっくりと噛み締めるように囁かれた言葉が、蓮の薬指で輝く指輪に染み込んでいく。 ああ…… ちゃんとわかってくれていた。 広実がいる幸せが当たり前になって、いつの間にか欲しがりになっていた蓮の我儘まで。 照れてばかりの恋人が紡いでくれた ストレートな囁きを、この指輪とともに胸に刻んでおこう。 ずっとずっと。
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