指輪と眠ろう

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「……大変失礼ですが、このサイズですと女性の薬指には大きすぎるかと」 こんなに有名なジュエリーショップの店員でも、この対応か。 まぁ、これが普通っちゃ普通なのかもしれない。 「いいんです。相手、かなり指が太いので」 「もっ、申し訳ございません!でも、サプライズにされるならなおさら……そうだ、彼女さまがお手持ちの指輪のサイズををこっそり測ってみる、というのはいかがでしょう?確実なサイズがわかります」 「指輪、一個も持っていません。とにかく今日、必要なんです」 自分はかなり感じの悪い客に入るなと、(れん)は思った。 実際 目の前の女性店員は、口角を無理やり上げて笑顔を保とうと努力しているのが丸わかりだ。 少し申し訳ないとは思いながら、蓮にも言い分はある。 別に店員を困らせようとして無理難題を言っている訳ではない。 事実を伝えているだけ。 何なら、本気で悩んでいるだけ。 そもそも、最初から店員の決めつけが問題なのだ。
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