(ヒューマンドラマ)一緒に暮らすということを実感する話

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(ヒューマンドラマ)一緒に暮らすということを実感する話

『男が未熟なのが、そんなに罪深いのか』 ◆あらすじ OLである「私」は数年交際した「彼」と同棲することになる。 仕事が帰ると、そこにはグチャグチャのベーコンエッグが……。 ◆本編  私は目の前に置かれた卵料理らしき食べ物で目が覚めた。ドロドロとした白身に薄い肉、そして、無駄に丸い黄身。 「なにこれ」  思ったそのままを言う声は朝のせいか低い。そのさらに小さい声で同居人の巧海がごめん、と返した。俯きがちな表情にはこんなはずでは、と書かれている。  こんなはずでは、はこっちのセリフだ。交際して数年、やっと同棲を始めたところだった。リモートワークで家を出ることがない彼に家事を任せてみた結果がこれだった。 「ま、まぁいいや。朝ご飯、食べよっか」  私は席につき、箸を用意する。巧海も向かいの席につくが、未だ俯いたままだった。箸で謎の卵料理を掴み口に入れる。薄い肉の塩気からおそらくベーコンエッグが作りたかったんだと察した。  味自体は悪くない。だが、食べているうちに黄身がもう1個出てきて顔をしかめてしまう。 「卵、何個使った?」 「4つ、だけど」  巧海のベーコンエッグを持つ手が止まり、首を傾げた。  『4つ、だけど』じゃないのよ。今は物価上昇とか鶏インフルエンザで卵10個300円する世の中。その中で色んなお店を探し回って、やっと手に入れた税込み300円未満の卵なのに・・・・・・それを、4つも使って。  内心自分でも大袈裟なくらいはらわた煮えくりかえっていたが、慌てて蓋をした。こんなことで朝から揉めたくない。 「美貴、どうかしたの」  ふと正面を見れば回答を待っていたのか、巧海の手が震えていた。 「ううん、なんでもない」 「そ、それなら。あと、牛乳飲んでいい?」  彼の問いかけにいいけど、と答えると巧海は背後にある冷蔵庫を開ける。そして、牛乳パックを手にとり、テーブルにある空のコップに牛乳を注ぎ、一瞬で飲み干した。  これも同棲してから知った謎の習慣だった。牛乳だけどうして私に許可を求めてくるんだろう。自分で蓋をしたのに、もやもやが溢れ出そうになっていた。  そのもやもやは昼食まで続き、ついには職場の人たちに漏らしてしまった。 「ということがあったんですよ。結局食べてきましたけど」  私は昨日のうちに作った手作り弁当を食べていた。  昨日の野菜炒めの肉はさすがに固く、飲み込めるまで噛んでいる最中だった。 「あぁ、確かにうちの旦那に料理やらせたときも似たような感じだった」  頷きながら同意したのは少し年上の島崎さん。数年前に結婚し、左手には指輪がきらめいている。 「無駄に食材も時間も使うわ、後片付けもしないわで大変だったわ。しかも、その日は仕事あった日だったから思わず怒ったら、拗ねて二度と作らなくなったし」  島崎さんが言うと、職場の女性たちは一層、分かる、と首を縦に振った。 ◆以下メモ書き・プロット ・主人公は現在バリバリ仕事をする女性の「私」。 私は数年付き合っていた彼と同棲することになる。 引っ越しのために長期休みをとった結果、家事をすることになった彼。 朝目覚めると目の前にはぐしゃぐしゃのベーコンエッグが。卵を4つも浸かった挙げ句の失敗策に怒る私。調理実習の経験でなんとかなると思った彼。彼はずっと実家暮らしだった。怒りながらも作ったものを食べる私。 その後、職場での昼食。それを話すと同僚に作ってくれるだけマシ。という話になる。ある人は休みの日は何もせずゴロゴロをすると言い、ある人は料理を作るだけ作って後片付けはしない、という。自分から不満を言ったものの、男は子どもだと批判ばかりする彼女らに私は疑問を抱く。 仕事を終わり、両親からのラインを見て実家に向かう。どうやら実家に忘れ物をしたようだった。家に行くと、父が休み当たり前のように母が茶を出す。母は彼に仕事をさせるために支えないといけないととく。父も仕事が資本だと言う。私は母に言われ、家事を手伝いながらも仕事を行っていた。小さい頃は母と同じように専業主婦になるとも考えていた。 そのとき、ふと人の考え方は環境によって左右される。それなのに、当人の意見として簡単に苦言を呈して良いのかと疑問に持つ。 それに気づいた私は急いで実家を出て、近くにある自分ちへ戻る。すると、彼はゆで卵を作っていた。茹でるだけなら失敗しないと言った彼。しかし、向いてみるとボロボロで完全に固ゆでだった。殻を剥きながら「そっちの家も仕事一筋でいい」とか言われたの、と問いかける。彼はそれを理由に台所に入れてもらえなかった、という。初めて知った事実に謝る私。そして、一緒にゆで卵もベーコンエッグも作ろうという。 互いに補って生きていくことを誓った。
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