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「コンプだなんて、面白い事言うなぁ。半田さん。半田藍美チャンだっけ? 藍美って呼んでいい?」
フランクに聞いてくる尾田さんは、諏訪さんと入籍=結婚した事だろうし、人畜無害の筈。特に虫唾も走らなかったので、どうぞご自由に、とにっこり笑っておいた。
「私、とりあえず竹輪、こんにゃく、玉子、がんもどきにします」
オタクは横道と変化球を攻める生き物なのだ。
「お。がんもどきなんて通だね。じゃ、石井はどうする?」
「俺は・・・・尾田さんのおすすめの竹輪と、大根、玉子にします」
石井は所詮、王道しか頼まない無難な地球人とみた。まあ、どうでもいい事だが。
「石井、俺も石井も同じ年じゃん。敬語も要らないし、尾田でいいよ。関西から戻ってきたからって、ずっと紗々で働いていた事は変わりないんだし、他の奴らにもそんなに気ぃ使わなくていいって」
「あ、じゃあ、尾田。ありがとう」
石井が嬉しそうに笑った。あ、結構可愛い顔して笑うんだ。ふーん。ま、これもどうでもいい話。爽摩の方が一億万倍可愛いし、って、比べるまでもないか。
「ここ、本当はきよ婆っていうばあちゃんが一人で切り盛りしている店なんだけど、今、ちょっと出てるからさ、俺が店番してんだ」
いうが早いか、尾田さんがカッターシャツの袖をまくり、シンクで手を洗ってカウンターに入って行った。カウンターにカッターシャツとネクタイを締めた尾田さんが立つと、リーマン居酒屋みたいな雰囲気になった。ああ・・・・孤独のグルメお店の大将版、みたいな感じになったよ。
手早く取り皿に決めたおでんを盛り、目の前に置いてくれた。
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