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1.自作小説!
「自作小説を書くよ!」
まーた、うちのクラスの騒がし娘こと沙弥きちが、思いつきでなんか始めたと、クラスメイトのみんなは思った。
いつものことだったので、特に誰も相手にしなかった。……ただ一人だけを除いて。
「ほへ? 沙弥、小説書くの~?」
沙弥の盟友にして残念なイケメン美少女、明穂が、興味深げにやってきたのだ。
背が高くて、端整な顔立ち。
黙っておすまししてさえいれば、某歌劇団の美形な男装役のごとく、キまっている。だけど悲しいかな、明穂はとっても優しくておっとりした性格の、ポンコツ少女なのだった。
「おぉう! 書くよ書くよ書いちゃうよ~!」
「どんなお話を書くの?」
「えーとねえ。まず。主人公の女の子が、コンビニの店員さんでねえ」
「ほうほう」
「異世界では、カワミューラ・アキホって名前でー」
「そーなんだー。異世界? ……うん?」
アキホかぁ。それって、どこかで聞いた名前だなあと、明穂は思った。
あれれ? そういえば、自分も実家はコンビニを経営していて、よくお手伝いをしているのだったっけ。なんだか、そのキャラクターと自分は共通することが多いねと、明穂は親近感を抱いた。
……多いどころかそもそも本人そのものなのだけど、明穂は気付いていないようだった。
「で。ある日アキホちんは、いつものようにお店で働いていたんだけど。お爺さんが運転するトラックがね。駐車場に停めようとして、ブレーキとアクセルを踏み間違えて、ずがしゃーんって、お店の中に派手に突っ込んじゃって」
「ちょちょちょちょちょーーー! それ、洒落にならないから! やめてよ~~~! 怖いよ~~~!」
不吉だ。縁起でも無い。
「で、そのトラックとアキホちんがごっちんこした拍子に、異世界に飛ばされるんだなこれが」
「どうしてそうなるの~!?」
初っぱなから、突っ込みどころ満載だった。
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