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薄暗い室内で俺はソファに体を預けている。テーブルには戦利品の紙幣が数枚。
あれから俺は何度も犯行を重ねていた。罪悪感より、見つかる危険より、スリルに身を投じる快感が俺を支配していた。
これはやめられないな。
ギャンブル依存症の直感が俺に告げていた。
犯行に及ぶ瞬間、脳内にあの快楽物質が大量に放出されていることを自覚した時の戸惑いは、今も鮮烈に記憶している。ひどい自己嫌悪に陥ったが、それはすぐに次への渇望へと変わった。
テーブルに放置したスマホが振動してメールの着信を告げる。ロックを解除して確認すると、美波からのメッセージだった。
『最近会えてないけど元気にしてる?ちゃんとご飯食べてる?パチンコばっかりしてたらだめだよ。どうか良二君がまっとうな道に戻ってくれますように。』
こんなことは続けられない。そんなことはわかっている。借金の返済が終わるまでだと自分に言い聞かせてもいる。
しかし、それでもどこからかあの、もう少しだけお化けが現れて耳元で囁くのだ。
『あと少し、もう少しだけやってみたら?そしたらきっと、もっと気持ちよくなれるよ。』
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