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カーテンの隙間から差し込む夕日で、その部屋は赤く染まっていた。俺は瓦解した大量のラノベや漫画の文庫本を跨ぎながら進む。リビングには空になったカップ麺の容器が散乱していた。
いつものようにクローゼットやチェストの中身をあらためる。目当てのものはなかなか見つからない。化粧台の引き出しの奥に隠し収納があることを発見し、俺の胸は高鳴った。慎重に取り外すと、そこには大量の札束が無造作に収められていた。
ビンゴ―!!
急いで札束をポケットに押し込むと、奥から奇妙なものが現れた。
なんだこりゃ?
さらに詳しく検分しようとしたとき、突然背後から声をかけられて俺は心臓が止まりそうになった。
「ちょっと、良二君!?何してるの!?」
振り返ると、そこに見慣れた地味な女が仁王立ちしていた。
「げっ!!美波、なんだよ、この時間は仕事じゃねえのかよ。」
「今日はちょっと理由があって早退したの。いったい私の部屋で何してるの?」
「えっ、ああ、えっと、忘れ物探してたんだよ。自転車の鍵。この前ここに忘れちゃったみたいでさあ。」
「嘘よ。だって良二君がここに来たの、もう何か月も前じゃない。」
俺はしどろもどろで言い訳を並べ立てたが、美波は冷たい視線を向けるだけだ。普段怒らない女が怒ると絶望的に恐ろしい。俺は観念して美波に向き直ると、土下座の姿勢になって床に頭をこすりつけた。
「美波、すまん!!これにはな、深い深い理由があるんだよ。」
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