35人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
お姫様育ちならぬ、本物のお姫様の彼女に、侍女のいない生活は大丈夫かと危ぶむ気持ちもあったが、杞憂だった。
彼女はすぐに村の若夫婦のような振舞いに馴染み、十日もすると見違えるほどの肌艶を取り戻した。
それとともに、二人での暮らしが微妙な緊張を孕むようになっていたのは気付かざるを得なかった。
そしてある晩、彼女は男の寝台に身を滑らせて、その背中にしがみつきながら言ったのだ。
「わたし、旅のせいで少し弱っていたみたい。それで気を遣ってくれていたんでしょ? だけどもう大丈夫よ、アッラシード」
* * *
最初のコメントを投稿しよう!