3−3 ガラの朝

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「朝は店が開いてないって困るな。朝飯も食えないし、依頼のチョコレートも探せないってことか」  昼間のうちに昨夜味見させてくれた店でチョコレートを買って夜にお祭りを楽しもうと思ったのに。  通りの店は海の方に近づくにつれて食べ物の屋台が目立つけど、どこも閉まっている。 「ナターシャ。俺、ちょっと街にパンでも売ってないか見てくるよ。お祭り用の店は開いてなくても、普通に暮らす人たち用の店は探せば開いてるかもしれないし。んで、ついでにアルミラに会いに行ってこようかな」 「行ってこようかな、じゃないでしょ!フィル。あんたまた勝手に単独行動する気?」  いきなりバンッとドアを開け寝巻き姿のジルヴァが部屋に入ってきた。びっくりした。いきなり入ってきたのも驚いたけど、赤と白のストライプ模様の寝巻きとナイトキャップにも驚いた。どんな格好で寝てんだよ。 「だって腹減ったし。市場は夜にならないと開かないっていうし、それまで行くとこないだろ」 「あるわ。港よ。ガラは港の街でもあるのよ。港の方なら魚市場が開いてるからそこを観光……探索しましょ」  今、観光ってはっきり言ったよな。遊びに出たいって気持ちは俺と同じか。でも教会は街の奥、内陸の方で港は海の方、真逆なんだよな。 「俺、魚とか興味ない。死んだ魚とか見るの嫌だ」  あの(うつろ)な目が苦手だ。 「魔法で生き返らせればいいじゃない」 「できるかよ!!」  魚のアンデッド想像しちまったじゃないか!つか、生き返らせてどうすんだ! 「おはよう。みんな早いな。朝から何をもめてるんだ?」  その時、ちょうどクロスとゴーフルが部屋に入ってきた。クロスがナターシャに聞く。 「えっと、祭りの市場が開くのが夜なのでそれまでどうしようか、と。ジルヴァは港、フィルは教会に行きたいということで意見が割れています。あの、ジルヴァ、フィル。それなら二手に分かれて夜に合流するというのはどうでしょうか」 「また分かれて行動するの?なんだか冒険者パーティっぽくないわね」 「そんなことはないですよ。みんなで行動するより二手に分かれた方が、色々と情報も集まって効率的なこともあります」  ナターシャの言うことは一理ある。ババロア商会の船が国に帰るのは明後日。帰りもババロア商会の船に乗せてもらうから俺たちも明後日まではここにいることになる。依頼のチョコレート買うだけなら余裕だけど、遊びの時間を考えるとそんなに長くはない。 「確かに昨夜のアンデッド船のことについては教会に知らせておいた方がいいな。大勢で行っても仕方ないし、別行動に賛成だ」  クロスがナターシャの意見に同意する。ゴーフルも隣りで頷いていた。 「じゃあクロスも教会行く?」 「いや、そっちはゴーフルに任せて俺はジルヴァと港に行ってくる」  意外な返答だった。  クロスは俺やナターシャの目付け役で来たってのは建前で、本命はアンデッド退治に行った教会一団の援護だと思っていた。聖騎士団とラリエット教会はつながり深いから。 「俺は灯台に仲間を助けてもらった礼をしに行ってくる。義理を欠いては聖騎士団の、いや一国の恥だからな」  あ、そっちか。  そういや潮が満ちたら道がなくなるっていうんで、ロクなお礼も言わず飛んで出て来たたんだった。 「アローシュさんのところ行くなら俺も行った方がいいかな。助けられた張本人は俺だし」 「庇護者として礼を言いに行くから、フィルは帰る時に挨拶に寄ったらどうだ」 「また船から落ちても面倒だしね」  ジルヴァがジロリと俺を見る。 「落ちないよ!」  半分本気で疑ってやがる。 「じゃあジルヴァとクロスは港方面で、俺とゴーフルは教会。ナターシャはどうする?」  ナターシャを見る。 「では私はフィルたちと教会に。多言語が通じるとはいえ、この国の言葉が分かる者がパーティにいた方がいいでしょう」  事前に確認したけどこの国の言葉が話せるのはクロスとナターシャ。ジルヴァも話せると言い張ってるけど、たぶん言語じゃなく勢いと身振り手振りでコミュニケーションするタイプだから除外。  そんなわけで、夕方までは二手に分かれての自由行動になった。  
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