3−5 ガラ城の宮廷魔道士

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3−5 ガラ城の宮廷魔道士

 教会から大通りに出て、王宮へ。  日が高くなってきたからかあるいは王宮に近づいたからなのか、人が多くなってきた。  王宮の門には二人、門兵が立っていてゴーフルがさっそく話しに行った。俺たちの国の城の門兵っていえばバルザックだけど、ここの門兵は兵士じゃなくてローブを着た魔道士。杖持ってるし。さすが魔法の国だな。  エシーレ国の聖騎士である身分を明かした上で、ゴーフルがこの国に来る途中でアンデッド船に遭遇したことを王宮に報告したいって話を門兵にした。門兵が宮殿内の従者と連絡を取りにいってる間、俺は王宮をぼんやり眺めた。  間近に見上げた王宮は、意外と小さいなってのが率直な感想。豪華絢爛というより、柱の装飾、壁に描かれた幾何学模様、一つ一つの建築の装飾や細工が細かくて繊細。ネリルじいちゃんが大事にしてるアンティークの時計が城になった感じだ。  綺麗な王宮は装飾だけじゃなくちゃんと結界魔法も張られている。その魔法のせいでどこか空気が歪んでいるというか、癖の強い香水を振りまいたような独特な空気がある。それから絶えず監視する視線。これも魔法か?  しばらく待っていたら王宮から若い男が出てきた。背は高いけど体格がいいというわけじゃないから兵士ではなさそう。どちらかというと執事のような雰囲気。良く言えば落ち着いた風格、悪く言えば年寄りくさい。  細面の顔立ち、髪を後ろで一つに結い、神経質そうな目つき。  その男が近づくにつれ、大きな魔力を感じた。  この魔力……王宮に結界魔法張ってるのこいつだな。  門兵が慌てて男を出迎える。門兵たちの態度からしても位の低いやつじゃない。 「あいつ、宮廷魔道士だ」  俺は小声でナターシャに耳打ちした。 「え?宮廷魔道士?」 「ああ、間違いない」  そう断言したのと、男がゴーフルに挨拶したのが同時だった。 「これはこれは遠いところよくぞいらっしゃいました。私はこの王宮の宮廷魔道士、カルソネスと申します」  カルソネスとゴーフルが握手を交わすのを見ながら、ナターシャが驚いた顔で俺を見る。やっぱり当たりだ。 「突然お伺いして失礼します。実は……」 「ええ、門兵から概要は聞いております。立ち話も何ですので、どうぞ中にお入りください。お連れ様もご一緒にどうぞ」  カルソネスが少し離れたところにいた俺に目を向け、その細い目と目が合った……と思ったら何か魔法を使ってきた。  その瞬間、俺は相殺魔法を発動し打ち消していた。  相殺魔法ってのは、相手が自分に対して催眠とか混迷とか精神に作用する系の魔法を使われてた時、打ち消す魔法。こういう系の魔法はよく目を合わせることで発動するんだけど、高位の僧侶は相殺魔法を常時いつでも発動できる訓練している。  そんな相殺魔法を俺みたいなガキが使ったからか、カルソネスが目を開き驚いた顔をする。でもその後すぐに何ごともなかったように、王宮に向かって歩き出した。 「さあ、どうぞこちらへ」  あまりにもさりげない魔法だったからゴーフルもナターシャも気付いてもいない。  何の魔法だったかまではわからないけど。  癖のある王宮の結界魔法に癖のある宮廷魔道士。 「変な挨拶しやがって」  俺がそう呟くと、ゴーフルが首を傾げる。 「ん?何か変だったか?流暢にこちらの言葉を使ってくれて俺は感心したが」 「まさか王宮に入れて宮廷魔道士の方にお目にかかれるなんて!ドキドキしてきました!」  アンデッド船の時から薄々思ってたけど、この二人は警戒心てものがないのかな。
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