3−6 占い師サヴァラン

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 サヴァランがカードを取り出しひらりと扇状に開き、見せてくれる。カード占いってやつか? 「占い師……?が、なんで俺に?」 「(ほどこ)し、かな。あなた僧侶でしょ?」 「え、僧侶の格好してないのによくわかったな」  白いローブの僧侶服を着ていても僧侶らしくみられたことないのに。 「実は声かける前にちょっと占ってみたの。そうしたら聖職者、って意外なカードがでたから。本当かどうか確かめてみたくなったのよね」  ここの国の占い師は魔力で占うんだろうか。的中率高くてちょっと怖い。  ちょうどその時、俺の腹が鳴った。サヴァランがクスクス笑う。 「街のお店はみんな閉まってたのに、どうやって買ったんだ?」 「自国の人同士はだいたいみんな知り合いだもの。お店が開いてなくても売ってくれるわ。みんながみんな夜まで寝てるわけじゃないし」  国というより村社会みたいな感じなんだな。 「じゃあ……遠慮なくいただきます」 「どうぞ、どうぞ」  チョコの大きな欠片を渡される。平たくて大きな円形の板チョコを無造作に割ったやつだ。チョコレートを受取り、口に入れた瞬間。 「その代わり占ってもいい?」  むせた。そうきたか。 「んっぐっ!!だから金持ってないって……」 「ふふふ、無料で占ってあげるわよ。練習のためにね。じゃあ、いくわね」  むせる俺に構わずサヴァランが隣りに座り、自分の膝の上にカードを並べていく。 「占うって何を占うんだ」  チョコを飲み込みながら聞く。サヴァランも口にチョコレートを入れた。占いながら食うのか。 「ほおね、君の今後のたひのこととか」  サヴァランが一枚一枚カードをめくる。チョコ食いながらしゃべるから何言ってんのかわかんねえ。 「……ん?ごくん、これは……仲間のことが出たわね。んん?何これ……ちょっと不穏」 「仲間……不穏?」  カードを覗きこむ。描かれているのは魔法文字。このカードは魔法道具だったのか。でも独特な文字でカードの意味まではわからない。文字の背後にうっすら描かれている背景でなんとなくわかるくらい。 「うん……仲間と、こっちのカードは荒野。それでこっちが……アンデッドね」 「アルミラがアンデッドに襲われてるのか!?」 「わっ、びっくりした」  カードを覗き込んでいたままサヴァランの耳元で大きな声出してしまった。 「ご、ごめんっ。で、その占いもっと詳しく説明して」 「えーとね、この白い人影のカードは君と関係が良好な人、つまり仲間を現していて、それでこっちのカードが荒野、こっちのカードが不死人、アンデッドね。占いはあくまで関わりを暗示してるだけで、襲われてるとまでは示してないわ」  しばらく呆然とカードを眺めた。まるで心の内を見透かされているみたいだ。 「最近この国でアンデッド被害が増えてるって聞いて、アルミラ……俺の仲間の僧侶は、それをなんとかするためにこの国に来たんだ」  宮廷魔道士のカルソネスですら俺をただの従者だと思ったのに。俺が僧侶だってこと見抜けたってことは、この占い師、もしかしたらかなり魔力の高い占い師なのかもしれない。 「そうだったの。確かに荒野の廃村でアンデッドが出たって噂は聞いたことあるわ。君の仲間の子はその荒野の廃村に行ったのかもしれないわね」 「その廃村ってなんて名前か知ってるか?」 「確か……ダネス。ダネス村よ」 「ここから遠い?」 「ううん、それほどでもないかな。歩いて半日もかからない。それに荒野っていうけど一応、道はあるしね」 「そうか、ありがとう。じゃあ俺、そこに行ってみるよ」 「え、今から行くの?」 「うん。もともとその仲間に会いに来たんだし」 「そう……、じゃあ気をつけて。もしまた何か困ったことがあったら相談に乗るわ」  サヴァランがカードをしまい、ベンチから立ち上がる。 「……親切なんだな」 「この国の人はだいたい親切よ。君の国は違うの?」 「いや、そんなことはないと思うけど……」  王都やシュトーレンみたいな大きな街なら治安もいいし、親切な人もたくさんいると思う。ただ人と人との壁がここほど薄くはない。 「あ、ただね、この国の人は人懐っこいけどみんながみんないい人じゃないからね。スリには気をつけて」  スリにはもうあったって言ったじゃん。良い人も多いけどスリも多いんだな、きっと。  サヴァンが「じゃあ、私はもう行くね」と言って手を振り、歩いていく。と、数歩歩いて足を止め振り返る。 「あ、貴方の名前、聞いてなかった」 「ああ、俺はフィル」 「そう。じゃあまたね、フィル」  
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