3−7 荒野の廃村 ダネス

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3−7 荒野の廃村 ダネス

 戻ってきた二人にサヴァランの占い結果を話しながら、俺たちは王宮を後にした。  二人とも占いについては半信半疑、というかまったく信じてなかったけど、『廃村』でアンデッドが出たっていう話は街の人々の間でわりと噂になってるらしい。 「ここからそう遠くないならみんなで行ってみるか」 「一度、クロスさんやジルヴァと落ち合った方がいいんじゃないかしら」 「俺一人で行くからゴーフルとナターシャは宿に戻っててくれ」  三人の意見は見事にバラバラ。  クロスたちと合流してからっていうナターシャの提案が一番いいんだけど。でもアルミラたちが早朝に王宮を出てからまだ戻ってきていないのが気になる。  ダネスまではそんなに遠くないって言うし、村の調査ってそんなに時間かかるものか。何かあったんじゃないのか。 「なあ今回だけは単独行動見逃してくれ。アルミラたちに何もなかったらすぐに戻るから」 「フィル、そんなに占いの結果が気になるんですか。特に悪い結果というわけではなかったんですよね」  ナターシャが俺に聞く。  大通りに出ると三人で立ち止まった。ここから先、どうするかによって向かう方向が違う。宿とダネス村はほぼ真逆だ。 「それはそうだけど……。でもさ、ここは異国。自国とは色々と勝手が違うだろ。アルミラたちはこの国の人たちが困ってるっていうからわざわざ海を渡って助けに来た。それなのに王宮の人たちはどこに行ったかすら知らないって、そんなのおかしいだろ。もしアルミラたちに何かあったらどうなる。助けに行けるのは俺たちしかいない」  何が起きているのかもわからない国で、他に誰も頼れない状況で、得体の知れない魔獣に囲まれて身動きがとれなくなってたら。 「俺はアルミラに会えなくなるのは嫌なんだ」  ナターシャとゴーフルが顔を見合わせる。 「もとよりアルミラたちを見捨てる気はありません。でも……そうですね。ぐずぐず迷っている暇があるなら行きましょう。ただしフィル一人ではなく、三人で」  ゴーフルも腕を組み上機嫌にうんうん頷く。 「そうと決まれば、移動手段を手配してきます」 「移動手段?」 「ええ。以前、利用したことがある商人のお店がすぐそこですから、ちょっと行ってきますね。二人はここで待っていてください」 「ちょっ、一人で行くのは……」  ゴーフルが止める間もなく、ナターシャは駆け出して行った。 「無鉄砲過ぎてヒヤヒヤするな。大司教の孫に何かあっては俺としては困るんだが」 「ダネス村の中には俺一人で行くよ。ゴーフルとナターシャは村の外で待っててくれ」  そうビシッと言ったものの。はあー……。  おかしいな。俺はその場に座り込んだ。振り返れば王宮はまだすぐそこ。まだほんのちょっとしか歩いてないのに異様に疲れた。 「フィル、大丈夫か?」  慌ててゴーフルが俺に手を差し伸べる。俺はその手を取り立ち上がる。 「調子が悪いのか?昨夜、海に落ちて風邪でも引いたんじゃないのか」 「うーん、よくわからないけど」  調子が悪いのだけは確かだ。 「フィルー!」  ゴーフルが何か言いかけた時、ナターシャの声が聞こえた。見ると大通りの真ん中をでっかいトカゲが歩いてくる。その背の上からナターシャが大きく手を振っていた。 「な、何だ、あれ!?」 「砂漠トカゲ!砂漠トカゲを手配しましたー!」  砂漠トカゲは人を軽く三、四人乗せられるくらい長くて大きな魔獣。ナターシャの話しだと、魔力は強いけどわりとおとなしい魔獣で、ガラでは従魔契約して移動手段として商売してるんだとか。 「ガラから南の岩石荒野地帯への移動は馬車ではなく、この砂漠トカゲに乗って移動するのが一番なんですよ。渇きにも強いし、力もあるから大人が三、四人は一度に乗れますしね」  ナターシャがトカゲの背を撫でる。 「もう一度乗ってみたいと思っていたのでちょうど良かったです」  眠たそうな目をしたトカゲはのっそりのっそりき歩いてきて、トカゲの顔がちょうど俺の顔の目の前に来たところで止まった。 ……本当に徒歩より早いのか?単に乗りたかっただけじゃないのか?  ちょうど疲れてたからいいけどさ。  前から砂漠トカゲを使役する商人、ナターシャ、俺、ゴーフル。  それぞれに鞍が付いていて独立して座れるようになってる。  砂漠トカゲはゆっくりと歩いて大通りを離れていく。景色は教会に向かった時と同じようにどんどんと閑散としていき、やがて岩と砂だらけの荒野になった。  王宮に大きな荷物を運び入れたり、異国から来た観光客なんかを荒野に案内したりするのにこの砂漠トカゲは重宝していて——  なんて商人の説明の声とゆっくりした揺れが心地よくて意識がだんだん遠のき、いつの間にか俺は寝ていた。
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