3−7 荒野の廃村 ダネス

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 何かにつまずいて派手に転んだ。  ほんっとツイてないな!この国に来て以来!! 「どうした!?何があった!魔獣か!?」  剣を抜いたゴーフルがすごい勢いで村の中から駆けてきた。 「ゴーフル!フィルが何かに襲われてます!」  ナターシャが起き上がる俺を指差す。  マジ痛い。鼻打った。 「フィル!魔獣はどこだ!?」  剣を構えたゴーフルが俺の目の前に一瞬でたどりつき、背に庇いながら周囲を警戒する。 「いや、魔獣じゃないよ」 「アンデッドか!?」 「違う。何かにつまずいて転んだ」 「こ、転んだ……?」    ゴーフルが険しい顔のまま振り返る。 「ダウジングでアルミラ探そうとしたらさ、何かにつまずいたんだ」  ゴーフルがナターシャを見る。 「私はてっきり土の中から魔獣に襲われたのかと……」 「フィル……」  二人が脱力し、俺を冷めた目で見る。  悪かったな。てか転んだだけなのに勝手に大騒ぎしたんだろ。  俺は鼻を押さえながら地面を見た。平べったくて四角い大きな石が砂に隠れていた。これにつまずいたらしい。   「ん?それは墓の残骸か。それにしては大きいな」  ゴーフルが石をまじまじと見る。石板のように加工された石。石棺の蓋か、あるいは石で作ったテーブルで足がなくなったやつか。 「砂でよく見えないが、何か絵が彫ってあるな。あと文字も」  しゃがみこんでゴーフルが手で石の砂を払いのける。平たく加工された石の表面に、確かに何かの文字と絵が彫られていた。 「ナターシャ、これなんて書いてあるかわかる……」  ゴーフルが言いかけたその時。  俺の足首に何かが巻きついたかと思ったら、勢いよく真後ろに引っ張られた。  当然、転ぶよね。顔面から転ぶの本日二度目。 「フィル!!」 「ナターシャ、離れていろ!!」  俺を助けようと手を伸ばしたナターシャの腕をゴーフルが取り、後方へと引き離す。  俺よりナターシャの安全を優先したのはいい判断だ。  ズルズルと引きずられながら身を翻すと、目の前にはさっきの枯れた木が迫っていた。ただの枯木だと思ってたのに、こいつ魔樹だったのか!  さっきまで魔力を感じなかったけど、今は木全体から禍々しい魔力を発している。  えっと、こいつは確か……   「食人樹のイビルウッドです!フィル!」  俺が思い出すよりナターシャの方が早かった。  枯れてるから気づかなかったけど、瘴気の濃い森の中で群生しているのを見たことがある。  魔樹は生き物ののように根っこをうねうね動かし、葉っぱが一枚もない尖った枝で獲物の俺を突き刺す気満々。 「足、引っぱんなっつうの!」  枯れた木が相手なら、火魔法で焼き払うまで。 「木炭にしてやるっ!」  樹木めがけて特大火魔法を放つ。  ……ってあれっ?思ったように魔法が発動しない。勢いよく放ったはずの火魔法は、火力が弱くて魔樹の幹まで届かなかった。  やべえっ、枝の射程距離に入っちまう。  足に絡む根っこを外そうともがいていると、先の尖った枝が俺の胸目掛けて迫ってくる。  腕で防げるか!?致命傷を避けるため腕で咄嗟に身体を庇う。一撃で絶命しなければ治癒魔法で……   「させるかあああ!!!!」  叫びながらゴーフルが俺の前に立ちはだかり剣で枝を切り捨てた。    「うおおおおおおお!!!!!」  ゴーフルが剣を振り回すたび、次々と襲いかかってきた枝が断ち切られていく。魔樹の攻撃が(ひる)んだ。その隙に引いて体制を立て直すかと思ったら、ゴーフルはさらに魔樹本体に向かって踏み込み、斧でも振るうように剣で幹に切りかかった。 「とどめだっ!!!!」  魔樹が斜め上から振り下ろされた剣に切断される。枯れた樹木とはいえ、剣で伐るのは相当な腕力だ。  木がビキビキと音を立て倒れ、生き物のように動いていた根が動かなくなった。  俺の足に絡んでいた根も緩まり簡単に外れた。   「フィル、怪我はないか」  剣を肩に担ぎゴーフルが格好良く振り返る。  怪我はないけど、ゴーフルの大声で鼓膜が破れるかと思ったよ。
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