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3−9 燃えろアンデッド
地下に降りるほど日の光が届かなくなって暗くなっていく。
通路の幅は大人一人がぎりぎり通れるくらい。狭くて天井も低い。入り口を塞いでいた平たい石は大きくて重かったけど、地下への雨水の侵入を防ぐためだったのかも。
火魔法で明かりをつけようとして、思いとどまる。地下で火魔法は空気薄くなるから使うな、ってじいちゃんに教わったっけ。
船で使ったのと同じ光魔法を使い、手のひらに丸い光を浮かせた。つもりだけど。もっとぱあっと明るくなるはずが、暗い光の玉しかできなかった。しかもチカチカと光ったり消えたりして逆に地下の不気味さが増す。……真っ暗よりはいいか。
光の玉で先を照らしてみると、両壁一面に描かれた絵が目に飛び込んできた。
宮殿内の鮮やかな色使いとは違って、草木から作ったような鈍い色の絵の具で描かれている。
「うわあ、なんだこれ。こんな狭いとこでよく描いたな」
絵は古くて剥げ落ちてるけど、人やら魔獣やら鳥やら草木やら色んなものが描かれいる。
罪人が掘ってたって言ってたけど、けっこう楽しんで掘ってたんじゃないか?これ。
壁の絵に見とれながら下っていくと、ようやく広い空間に出た。
光魔法が隅々まで照らし出せないくらい、広い。地上よりも空気が冷んやりしている。
「おーい、誰かいるかー……?」
俺の声は闇に吸い込まれ、シンと静まり返った。
急に心細さが襲う。
ゆるやかに螺旋を描いて下ってきたから上を見てもゴーフルたちは見えないし。でもあそこまで強引に一人で行くって言って来た手前、すぐに引き返したら格好悪いよなあ。
足元を確かめがなら先に進む。
広い空間の先に通路が二つに分かれて伸びていた。
どっちに進めばいいんだ?
探索魔法を使ってみるか。風魔法を軽く使い、風の通り方と跳ね返り方で様子を見る。
うん、よくわかんねえ。
調子が悪いせいか、いつものように魔力で気配や地形を探れない。
まあいいや。右の道に行ってみるか。
通路を少し歩くとまた部屋に出た。さっきよりも小さな部屋で、壁に人や動物が彫られている。真ん中に大きな石の箱。これって……。
「お休みのところ失礼しまーす……」
石の箱の横を通り過ぎ、さらに奥の通路へ。次にたどり着いた部屋は両脇の壁に蜂の巣みたいにいくつもの穴が空いていた。
壁の奥に頭を突っ込んで寝るタイプのベッドか。その方が暗くてよく眠れるもんな。永遠に寝るやつらだし。
「燃〜えろよ、燃えろ〜よ〜、アンデッドよ燃ーえーろー」
静かだと怖いから歌いながら歩く。
ベッドの方はあんまり見ないようにしながら、奥へ進む。ちらりと目に入ったベッドには誰も横になってないようだけど、お出かけ中かな?
あー、もう。ちょっとでも何かが動く気配でもあったら叫びそう。てか、奥に行くほど寒くなってくんだけど。
「アルミラー?」
通路が分かれるたびに全部右を選んで歩いた。広い部屋に出たり狭い部屋に出たり。下って歩いているかと思えば上りになたり、行き止まりになったり。ナターシャの言ってたとおり地下の中は複雑でこれ以上、入り組んだ道に入ったら俺も戻り道わからなくなりそう。やっぱ一人で来るのは無謀だったかな。
そう思いかけたその時。
道の先で黒い影が横切った。人のような縦長の影じゃない。四つ足の動物のようなシルエット。……魔獣?
次の瞬間。
ゴトンっ!!!!ガラガラガラガラ……!!
遠くで石が崩れた音が響く。俺の頭上の岩からもパラパラと砂が落ちてきた。思わず頭を抱えて座り上を見る。
なんだ!?こんなとこで生き埋めとか嫌だぞ。
「逃げてください!!」
地下墓地に響いた声。
今のはアルミラの声だ!
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