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俺は声のした方に走り出した。
光魔法で照らしてるのは自分の周囲だけ。先は闇だ。
曲がった通路の突き当たりの部屋から爆発するように光が発光していた。アルミラの光魔法だ!
「アルミラ!!!!」
部屋に飛び込むと目が眩むほど明るい。けど俺にとっては嫌な明るさじゃない。光の中にいるアルミラが目に入った。
「アルミラ!!無事だったか!?」
壁を背にしたアルミラが俺に気づく。
「えっ!?フ、フィル!?」
怪我はないみたいだけど無事な状況ではなさそうだ。アルミラは今まさに石でできた巨大なゴーレムに壁に追い詰められていた。
ゴーレムはアルミラの手から放たれた強烈な光を防ぐように腕で顔を覆っている。アルミラが使ったのは聖なる光魔法。普通の魔獣に対しては目くらまし程度にしかならないけど、アンデッドや魔法で操られてるゴーレムに対してはかなり有効な魔法だ。
アルミラに駆けよろうと部屋に一歩踏み入る。と、ゴーレムが片腕を石壁に叩きつけ威嚇してきた。壁に穴が空き、地下が揺れる。
おいおい、崩れたらみんな生き埋めだぞ。って、あいつは生きてないのか。
俺から見て右奥の隅にアルミラが追い詰められている。
アルミラの光魔法が徐々に弱まり、光が収縮していく。アルミラを踏み潰そうとゴーレムが片足を上げた。
「させるか!!」
俺はゴーレムの足めがけて氷魔法を放った。足を丸ごと固めてやろうと思ったけど、微妙にゴーレムの足下と地面がちょっと凍っただけ。それでも片足立ちになっていたゴーレムが足を滑らせ体勢を崩した。
「アルミラ、今だ!こっちに!!」
ゴーレムがズシンッと尻もちをつく。アルミラはゴーレムの脇をすりぬけ俺のところに走ってきた。駆け寄って来たアルミラをそのまま受け止める。
アルミラが通路に出ると、ゴーレムの動きがぴたりと止まった。……追ってくる気はない。誰かが部屋の中に入ると魔力に反応して攻撃してくる仕掛けらしい。
「動き……止まったな」
「……みたいですね」
アルミラと顔を見合わせる。
たった数日会わなかっただけだけど。そしてこんな状況だけど。アルミラの顔を見た瞬間、なんかほっとして心が軽くなった。
「フィル〜!まさかこんなところでフィルに会えるなんて。どうしてフィルがここに?」
「説明は後だ。それよりこいつ何だ?」
「隠し通路を通ってこの部屋に辿りついたら急に石の像が動き始めて……。たぶんこの部屋の護り像だと思います」
「隠し通路?まあいいや。とにかくこの部屋から離れ……」
ズシンッ……ズシンッ……!!
今度は何の音だ?
重い足音のような一定のリズム。嫌な予感を感じつつ振り返る。すると俺が来た通路の奥からもゴーレムが歩いてきていた。
「げっ!!」
「またゴーレム!?」
あんなやつ俺が通ってきた部屋にはいなかったぞ!?
「部屋に入れば部屋の中のゴーレムが怒りますし、フィル、どうしましょう!?」
「くそう……」
完全に挟み討ちだ。
どこか抜け道はないかと、周囲を見回した。すると部屋の中のアルミラが張り付いていた壁の下の方に、小さな石の扉らしきものがあるのが目に入った。
「アルミラ、あそこの扉は開かないのか?」
「開くには開きます。僕はアンデート司祭たちとあの扉からこの部屋に出て来たので」
あれがアルミラがさっき言ってた隠し通路か。あの扉からこの部屋に入ってゴーレムに出くわし、一緒にいた足の遅いじじい共を逃すため扉を閉めてアルミラだけ残ってたわけか。
「部屋から出たらゴーレムは追ってこない。あの扉の向こうに行こう」
「でもフィル、あの扉は重いのでさっきみたいに開け閉めしてる間にゴーレムに攻撃されてしまいます」
「俺があいつを引きつけてるうちにまずアルミラだけ扉の向こうに行くんだ。扉を抜けたらすぐ閉めて少しだけ隙間を開けといてくれ。俺が通れるくらい。んで俺が通ったらすぐ氷魔法で扉を固める」
「さすがフィル!わかりました!その作戦でいきましょう!」
ズシンッ……ズシンッ……!!
通路のゴーレムが迫ってきた。時間がない。
部屋の左側には大きな石の棺がある。この部屋に入る者を追い出そうとするってことは、護りたいのはあの石棺だろう。だったら。
俺はゴーレムに向かって風魔法を使った。一陣の風がゴーレムの頭に向かって走る。たいした威力はない。それでもゴーレムの後頭部あたりに風があたり、ゴーレムが魔力に反応して動いた。その直後に俺は石の棺の裏に走った。狙い通りゴーレムが俺に顔を向ける。
さあ来い!石の棺を挟んで追っかけっこだ。石棺は大きくて石棺越しにゴーレムが手を伸ばしても俺には届かない。こいつは石棺を護る像だから、石棺を壊してまで攻撃もできない!
「ほらほら、捕まえてみろよっ!」
俺、魔法も得意だけど挑発はもっと得意だ。ゴーレムは土とか岩でできたやつで、目にあたる空洞の部分の奥に、赤い光が見える。その瞳のような目が一層明るく光り俺を捉えた。俺に手を伸ばして追って来る……はずだった。
「ガガガガ……」
声とも岩の擦れる音とも言えない妙な音を出し、ゴーレムが身を翻した。ゴーレムが見据えた先には、今まさに部屋の扉を開けているアルミラがいる。
……えっ!?なんでっ!?
魔力の強い方を追ってくるんじゃないのか!?
ゴーレムが片腕を振り上げ、アルミラに襲いかかる。
「アルミラ、危ない!!!!」
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