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1−5 冒険者ギルドの依頼③
リトッツォさんの勧誘は丁重にお断りして、俺たちは薬草探しの続きをはじめた。ブチブチと草を引っこ抜く。半分やけくそ。なぜって、よくよく話しを聞いてみるとリトッツォさんが勧誘したかったのはクロスだけで、俺らは眼中になかったから。低ランク冒険者なんて連れていくだけ船代の無駄ってことだろう。
世の中は肩書きが大事。早く低ランク冒険者から抜け出さないとほんと自信失くすよ、俺。
「すごいです、フィル!あなたは薬草探しの天才かもしれません。将来薬草屋でやっていけるかも」
やけくそで草をむしる俺に対して、ナターシャは大喜び。種類ごとに分けて袋にしまっていく。
「あんまり興味ないな。それよりこれって何ランクくらいの仕事?」
「えーっと、こっちの毒消し草はEランク。今フィルが採ってきてくれたカラカラ草は胃腸の働きを良くする薬草でFランク。それでさっき私がみつけたのが料理の香り付けにいいハーブでFランク。依頼ランクとしては高くはないですけど、依頼遂行の実績がないと上位ランクの依頼は任せてもらえないので、もう少し実績を積みたいですね」
「一発で認めてもらえるAランクの依頼とかないの?」
「あるにはありますが、ここ王都から近い場所ではありませんね。高難易度の依頼はそれなりに遠く、それなりに過酷な土地ににあるのが普通です。今からでは行って戻ってくるだけでも時間がかかってしまいます」
それなりに遠く、それなりに過酷な土地か。こんなことならトゥーレ村にこっそり転移魔法陣を描いときゃよかった。やっぱ冒険者になるならそれなりの知識が必要なんだな。
「ねえ!ちょっと見てこれ!私、芸術家になれるかも!」
「んん?なんだよ、ジルヴァ」
振り向くとジルヴァが土で城を作って遊んでいた。確かにいい出来だけれども。クロスはクロスで木陰で寝そべりパルシファーといちゃいちゃしてるし、真面目に薬草探してるの俺とナターシャだけじゃね?
「フィル、この城どう?」
ジルヴァがウキウキした目で聞いてくる。
「ああ、魔獣の城っぽくていいな」
ドロっとして朽ちた感じが不気味でいいと思う。
「どういう目してんのよ!これが魔獣の城なわけないでしょ」
「じゃあどこの城?」
「エシーレ城でしょ、どう見ても」
いやそっちこそどういう目してんだよ。
エシーレ城ってのは俺らの国、エシーレ国の王都の真ん中にある王城のことだけど、こんなグロテスクじゃない。
「ナターシャはどう思う?」
ジルヴァがナターシャに意見を求めたその時。俺とクロスがすごい勢いでジルヴァの背後に近づいてくる魔力に反応した。二人が同時にジルヴァを、正確にはジルヴァの背後をにらむ。
「え、何?そんな怖い顔して」
俺とクロスににらまれたジルヴァの顔が引きつる。その直後、ジルヴァが大きな影の中に入った。
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