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一日の仕事が終わり、重い足取りで帰路に就くと、アパートの扉の前に一匹のカエルがいた。
カエルなんて、久しぶりだ。
里佳はしゃがんで、カエルにあいさつした。
「こんばんは」
カエルはジッとこちらを見ている。
里佳は、数年前の会話を思い出した。
「今日、遊びに行っていい?」
麻紀から連絡があった。
「いいよ。今図書館だから、しばらくしたら帰るところ」
麻紀と里佳は新卒2年目。まだ仕事をこなすだけで精一杯の頃だ。
帰ると、麻紀がすでにドアの前で待っていた。
「早く着いちゃった」
「ちょっと待ってて。家の中、少し片付けるから」
里佳は急いで、散らばっている机の上や床にある本やらを積み上げ、少し掃除機をかけた。
「どうぞ、どうぞ。あまりキレイじゃないけど」
「おじゃまします。急でごめん」
「ううん。ここに座って」
「うん」
里佳は紅茶とお気に入りのお菓子を差し出した。
「これ、今話題のクッキー」
「あ、これ食べてみたかったんだよね。おいしそう。いただきまーす」
「やっぱりおいしいね」
「ほんと。クッキー大好き」
二人はポリポリとクッキーを頬張る。香ばしい味が口の中で広がる。
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