転生魔法少女は助けた王子に執着されている

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 近所の人に店番をお願いして、変身したサフラがカイルについて馬車に乗ると、しばらくして城内の奥にある枯れ果てた泉に連れて行かれる。 「ここがそうなの?」 「そうだよ。数年前にこの地を魔物が穢してから妖精を形作る水も、妖精の源となる植物も枯れてしまったけれどもね」  枯れ果てて土色の底が見える泉とその泉の周りに生える枯れたツタ状の草に、サフラは触れる。すると、手から溢れた紫色の光が泉の中に落ち、落ちたところから虹色の水が湧き出てきたのだった。 「うわぁ!」  虹色の水は泉を満たすと、枯れていた草を蘇らせ、次いで蛍の様に無数の光が上空へと舞った。光は人の形を作り、やがて四枚の羽が生えた妖精へと変わっていった。 「驚いたな。こんな幻想的な光景が見えるなんて……」 「私もです。カイル王子」  妖精たちは二人に手を振ると、各々どこかに飛んで行く。自分たちの主を探しに行ったのだろうか。  妖精たちに手を振り返していたサフラが来た道を戻ろうとすると、カイルが腕を掴んできた。 「もう帰るの?」 「目的は済んだと思うので」  カイルを振り払おうとすると、両肩をがっちりと掴まれる。 「あの……」 「もっと君の事を聞かせて欲しいんだ。どこで妖精と知り合って、どうやって契約を交わしたのか、どうすれば変身出来るのか、変身した君の姿がどうなっているのか、フラワーアリスという名前もどこから来ているのか!」 「そういうのは……」 「ぼくたちの為にも魔法少女として指導してくれないか。今後も僕のパートナーとして!」 「結構です! 私は今世こそ魔法少女を辞めて幸せになるんで!」  サフラは上空に向かって跳ねると、下ではカイルの「彼女を追うんだ!」と指示する言葉が響き渡る。 「冗談じゃない! 私は変身能力も何もない、ただの普通の女性になって、今度こそ普通の生活を送るんだから!」  そう呟いたサフラを、生まれたばかりの妖精たちがクスクスと笑う。  その後、馬車で追いかけてきたカイルが執拗にパートナーになるように勧めてきたが、次の日も、その次の日も、どれだけサフラが断っても執拗に誘ってきたのだった。  どうやら、今世でも魔法少女は辞めさせてくれないらしい。
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