転生魔法少女は助けた王子に執着されている

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 光が消えると、辺りを見渡して魔物が残っていないか確かめる。魔物も人もいない事を確認して、サフラが変身を解こうとした時、草木が音を立てたのだった。 「誰?」  短く誰何して音が聞こえてきた方向に剣を向けると、そこには仕立ての良さそうな服を着たサフラより少し年上くらいの青年が両手を挙げていたのだった。 「驚いたな……! まさか噂に聞く魔法少女に会えるなんて」 「貴方は?」 「まずは剣を降ろしてくれないか。心配しなくても君に危害を加える気はないから」  サフラが剣を降ろすと、青年は安心した様に肩の力を抜くと両手を降ろした。 「助けてくれてありがとう。ぼくはカイル・サルム・ワームウッド。このワームウッド王国の第一王子だ」 「カイル……王子? 王子がどうしてここに?」 「さっきの馬車に乗っていたんだ。君が助けてくれた馬車だよ」  カイルが示した先には先程の馬車が停まっていた。サフラは「そう」と端的に返す。 「教会での儀式に立ち合った帰り道に魔物に襲われて動けなくなっていたんだ。子供たちを怖がらせない様に護衛を減らしたのが仇となってね……」 「無事なら良かったです。もう魔物はいないと思いますが、気をつけてお帰り下さい」 「何か礼をさせてくれないか。君の噂はぼくも聞いている。数年前から現れる様になった謎の魔法少女であり、国に登録された変身能力を持つ者の中には記録が存在しない魔法少女だと。こんな機会、滅多にないだろう。だから……」 「そういうの結構です。それでは……」  カイルに背を向けたサフラは、地面を蹴って空に飛び上がる。下から「待って!」とカイルが呼び止める声を聞いた気がするが、それを無視してサフラは木の枝を伝い、跳ねるように街に向かって飛んでいく。 「まさか王子の馬車だったなんて……」  馬車から距離を取ったところで木から降りると目を瞑る。紫の光が霧散すると、サフラは元の姿に戻ったのだった。 「ジュンコ〜! 疲れたよ〜」 「あまり前世の名前を呼ばないで。ポル」  話しを聞いているのかいないのか、ポルはサフラの胸ポケットに入るとそのまま寝入ってしまう。 (まあ、いいか。妖精の姿が見えるのは、ポルと契約した私だけだろうし)  そんな事を考えながら、サフラは実家の花屋に帰って行く。  さっきの親子はもう帰った事だろう。儀式が終わったのなら、祝いの花を買いに来る人は多いかもしれない。早く帰らなければ。  サフラは足早に戻って行ったのだった。
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