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「ちょっ…! リョウッ!」
蒸し暑い風が教室の中に入り込む夏日に、汗を掻いたばかりで湿った体で抱きついてくる涼を嫌がり、浩太は涼を比べれば大分細い腕で押し返そうとする。
「あんまフザケてると、女子がマジで戻って来るぞ~」
「それに、ウチの学年首席サマにくっついて、オマエのアホがうつったら困るから、とっとと離れろよな」
「いーじゃんか、コイツ体温低いんだか分かんないけどひゃっこくて気持ちいいし…いーニオイすんし」
クラスメートの茶々に対してブーイングを返した涼は、じたばたと暴れる浩太の細い腰を掴み寄せ、その首元に鼻先を押しつけくんくんと浩太の体臭を嗅ぐ。
抱き締める浩太からほのかに漂う、爽やかなフレグランスの香り。
「オレと全然違うんだよな~」
片腕を浩太から離して自分の腕や脇の匂いを嗅ぐ涼に、再びクラスメートの野次が飛ぶ。
「ばぁか、お前は無駄な動きが多すぎんだよ、だから人より余計に汗掻くんだよ」
「よけーな動きぃ?」
「ソフトでベース踏むのに、何で側転すんだよってこと!」
ああ、と、クラスメートの話に夢中になり始めた涼の腕から密かに浩太は脱出し、手の甲で涼と密着した頬を拭い、震える息を吐く。
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