1 出会い

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*** 「――アルダ、明日もまた来ていい?」  薫風香る夕暮れ時、熱心に机の書物をめくっていると、ふいにリュカが後ろから覆い被さるようにして、顔をのぞきこんできた。  清涼な香りが鼻をつき、吐息が耳にかかる。背に少年の重みを感じて、アルダは苦笑しながら首を回した。 「ああ。なにか食べたいものがあれば、帰りがけに市場で買ってくるけど」  すると若木のような腕が両肩にかかり、弾んだ声が耳を打った。 「えっ、それじゃこの間、ここで食べさせてもらった餡饅頭がいいな」  なんだかこの若様、最近素直に反応するようになって、ますます可愛くなったような。 「よーし、了解」  弟分の喜ぶ顔見たさに市場の飯屋(めしや)に走るのだって、もはや日常茶飯事だ。 「でも食べ過ぎるなよ」 「わかってるって」  そんなふうにしてアルダはいつのまにか、リュカといる生活に()()んでいった。
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