2 市場にて

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「だいたいリュカはなんで、そんなに外に出たいんだ?」 「えー。だって正直、家で家庭教師どもに絞られてると、だんだん泥沼に沈んでいくような気分になるっていうかさぁ」  形のよい唇を尖らせる。それからアルダの背後に立つと、(かんざし)を取ってアルダの髪を手ぐしで()き始めた。 「おいリュカちょっと、その(かんざし)返せって」 「いいから座ってて。もっと綺麗に結ってやるから。あんたのはなんか、雑すぎなんだよ」  口ぶりは悪くても、長い指が後れ毛をからめとるさまがいかにも丁寧だったので、アルダは黙って言われたとおりに髪結いをまかせる。すると後ろでため息の混じった声がした。 「優秀な俺だって、憂さを晴らしたく時もあるんだって。わからないかなぁ、この気持ち」  リュカも年相応に遊びたい盛りなんだな。アルダは内心、失笑する。この国の夏は日が長い。夜遅くなってもまだ、太陽が西の空で白い光を放っているものだがら、繁華街も遅くまで盛況だ。 「それに、このまえ使用人たちが話しているのを、こっそり盗み聞きしてさ。誰に誘われたの、誘われないのって大騒ぎしてたから」
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