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「だいたいリュカはなんで、そんなに外に出たいんだ?」
「えー。だって正直、家で家庭教師どもに絞られてると、だんだん泥沼に沈んでいくような気分になるっていうかさぁ」
形のよい唇を尖らせる。それからアルダの背後に立つと、簪を取ってアルダの髪を手ぐしで梳き始めた。
「おいリュカちょっと、その簪返せって」
「いいから座ってて。もっと綺麗に結ってやるから。あんたのはなんか、雑すぎなんだよ」
口ぶりは悪くても、長い指が後れ毛をからめとるさまがいかにも丁寧だったので、アルダは黙って言われたとおりに髪結いをまかせる。すると後ろでため息の混じった声がした。
「優秀な俺だって、憂さを晴らしたく時もあるんだって。わからないかなぁ、この気持ち」
リュカも年相応に遊びたい盛りなんだな。アルダは内心、失笑する。この国の夏は日が長い。夜遅くなってもまだ、太陽が西の空で白い光を放っているものだがら、繁華街も遅くまで盛況だ。
「それに、このまえ使用人たちが話しているのを、こっそり盗み聞きしてさ。誰に誘われたの、誘われないのって大騒ぎしてたから」
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