(二)

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 少し奥まった場所にあったせいで、この位置にくるまで気づかなかった腰高のそれに惹かれたのは、ひとえに、“入場無料。お気軽にお入りください”の文言から。  でも、どうしよう……。  境内からの坂道とどっこいどっこいの幅だったその隙間の、やはり同じような深さを見せる暗がりに目をやりながらの逡巡は―――、  もし、主宰者がいちいち説明につきまとい、しまいに自費出版した写真集などを売りつけられる展開にでもなったらめんどくさい。―――という危惧からで。  だが、 “ダァーン!”  天はそんな気がかりをあざ笑うように、轟音を続かせた。  ああ~、もう背に腹はかえられない!  揃っていた爪先を、奥に行きどまりを窺わせる暗闇へ、わたしは動かした。
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