(思索②)

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(思索②)

     (思索②)  開いたスマホには、今夜関東上空に見える彗星のニュースが踊っていた。近年発見されたというその星は、有名な七六年ごとにやってくる彗星より一年長い七七年周期らしく、それがいかにもラッキーなイメージを持たせ、ずいぶんと前から世間をにぎわせている。  特に興味があったわけでもなかったが、とりあえず読み進めようと思ったところに、 「お決まりでしょうか?」  鈴のような声が降ってきた。  メニューにあったハーブティーを、指を差すだけで頼んだ私の意識は、軽く頭をさげ去っていったこの間と同じウェイトレスに、ニュースから自然と移行していた。  艶々しい髪をアップにまとめた柔らかな美形である彼女の、品のよさを漂わせるその若い姿態は、以前目にしたときから良家のお嬢さまを想像させていて……。  そんな彼女が、なぜ喫茶店で働いているのか。おそらくアルバイトとして……。  まあ、お嬢さまだからバイトをしてはいけない、という決まりがあるわけではないが……。  いや、そんなことはどうでも―――。  すぐに思い直し、スマホに視線を落とした。  しかし、気分転換にとやってきたにもかかわらず、案の定、頭は画面の記事を追うことをすぐに休止し、くり返してきた思索をかわって蘇生させる。  あのときの出来事が、望の精神を変貌させる種だった……。  ―――その考えでいいのか……。  自身に置き換えてみる。  ―――やはり、わからない……。わからないが、それしかないのでは……。  流れ込んできたそよ風が、窓外へ顔を誘った。  すると、晴れ渡った空の清々しさは、  もう、やめてしまおうか……報われる望みのほとんどない、こんなこと……。  彼女のことは、綺麗さっぱり忘れようか……。  今まで幾度も顔を覗かせたあきらめを、また呼びだした。  だが―――、  いや、ここまで自分はやったのだ。  と、頭をふって自身に叱咤を送るのも、いつもと同じパターンだった。  置かれていった水に、そっと口をつける。 “グフッ、グフッ……”  すかさずテーブルに出しておいたハンカチを口にあてた。  そして喉が落ち着いたところで、ふと―――、  今夜の流れ星に願いをかければ、もしくは妥当な結論を探しあてることができるかも……。  と、半ば真剣に考えた自分に、一瞬後、フッと苦笑を洩らした。
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