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もしかすると、今日も変わっているのでは……。
であれば、その新たな首くくりの画も味わいたい。なにしろ昨日は疑問だけで終始してしまい、精神的興奮をもよおさせることはできなかったから。―――仮に同じだったとしても、それはそれで構わない。余念を外して観れば、昂りはきっとやってくるに違いない。
講義中にふとわいたそんな心情が、二日ぶりに聞く雷鳴をもろともしなかった。
はたしてわたしの雷恐怖症は、本当だったのかしら? などと考えながらいく駅からギャラリーへの足どりは、軽かった。
変わらず同じ位置にあった看板をすぎ、階段をおりていくと、開かれた鉄扉の前の傘立にはなにもささっていなかった。
また貸し切り状態かしら。と、嬉しさを含んだ思いでくだりきり、傘立に傘を立てると、
「いらっしゃいませ」
明るい声がいきなり届いたので、また飛びあがりそうになった。
ふり向くと、あの制服の女の子の、ニコッとした小顔が受付にあった。
「あ、あ、どうも……」
とは返したものの、予想外の驚きがなす術を見失わせていて―――。
が、
「先日はありがとうございました。また、本日もご来場いただき、大変嬉しいです」
変わらぬ表情で頭をさげた彼女の、その丁寧な挨拶で、
「あ、いえ……またお邪魔します」
ギャラリー内へ足を踏み入れることができた。
ただ、弾む気持は、「またきたのか?」と思われているんじゃないか……。という疑心からの恥ずかしさにすり変わっていた。―――もちろん彼女の態度に、そんな気配は微塵も覗けなかったが。
「ごゆっくりどうぞ」
そう継いだ彼女は、
「あ、エアコン、寒すぎたりしたら遠慮なくいってくださいね」
と、多少ざっくばらんになった口調で添えた。
「あ、はい」
頷き、小顔から視線を外したわたしは―――さて、どうしたものか……。
目的は首吊り写真。それもれっきとした展示物であるがゆえ、いきなりその前に立とうと決して非礼なことではない。―――と思いもしたが、やはりスタッフがいる手前では、どうもできにくく……。
だから初日と同じく、彼女の後方に並ぶものから見ていくことにした。
草花の写真に入れ替わりはなく、その配列にも変化は見られなかった。
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