(三)

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 初見では少なからずの感動を覚えたそれらも、二回目となると薄れ、撮影者には悪いが、単に目をやっているだけの状態だった。  わたしと彼女ふたりだけの空間内が少なくはない時間続いたが、ほかの客がやってくることは未だなく―――。  はたしてわたし以外の来場者は、今までにどれぐらいあったのだろうか……。  そんな疑問を抱きながらさりげなく受付へ視線を流すと、椅子に腰かけていた彼女は、卓上のPCにじっと顔を近づけていた。話しかけてこようとする雰囲気は感じられなかったので、ちょっと胸をなでおろす。  そして、やっと隣に目的の作品を迎えると、さすがに制御していた鼓動もままならなくなり―――。  再びちらっと受付へ意識を向けたが、直角に開いている扉のおかげで、彼女の姿はまったく見えなかった。これであればもちろん、隣に移動しての写真に没頭する姿も、完全に彼女の視界から隠れる。  せりあがる興奮からなのか、はたまた緊張からなのか、まったくもって不明だったが、蟹歩きのような奇妙な動きでその最後の展示写真の前に立ったわたしは、視線をあげた。 「どうして」の思いは、「やはり」のそれに、たちまち押し潰された。  ―――モデルだけが、また違っていた。  今日の彼女は肩口までのミディアムボブの下に、セーラー服。―――女子校生か……。  そして、ショートカットにTシャツ姿の彼女よりも、明らかに悶えを激しくしているその半身は、昨日わかせたような疑問の再燃を見せることなく、初日抱いた、いや、それにも増した興奮を、にわかにもたらした。  飛びだした眼球―――。  鼻口から垂れ流れる液体―――。  女子校生のものとは思えないひしゃげた顔―――。  野獣のような苦悶の絶叫―――。  激烈によじらせる躰―――。  淫らに乱れるセーラー服―――。  染みを広げるスカートの尻―――。  まき散らされる、耐え難い激臭―――。  まるで自分で自らを強淫しているような地獄絵を、くり返し網膜に叩きつけてくる妄想は、わたしの股を卑猥な液体で満たし、えもいわれぬ歓喜を届け続けた。―――が、 「あの」  その声で我に返った。 「どうかされましたか?」  いつの間にか横にいた彼女のその問いかけは、わたしがすっかり時を失っていたからだろう。 「あ、いえ」
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