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「あたしも最初はそうだったんです。でも、やり始めたらどんどんはまっちゃって」
だから、ぜひやるべきですよ~。と返してきた彼女の顔つきは、一段と喜びに満ちたもののようになった。
客もこなく話し相手もいなく、退屈していたのだろう。それから彼女は、写真をやり始めたきっかけや、多くのコンテストに応募したが、まだ受賞したことがないこと、そして、一番難しかった被写体はなになにだった、などと、休むことなく口を動かした。
その天真爛漫ともいえる態度に迷惑な感じは持てず、かえって好感が増していた。そこには、まるで歳の近い妹に対しているような親近感があったからかもしれない。
そんな微笑ましい心持で対峙していると、彼女ははっとしたように口元に手をあて、
「あ、ごめんなさい。ペラペラしゃべっちゃって」
真顔を戻した。
「いえ、そんなこと。知らない世界の話で楽しいわ。それに、高校生と話せることなんてないから」
それは本心でもあった。
「ほんとですか!?」
「ええ、ほんと」
彼女の喜色が、わたしの表情にもたやすく伝播した。
「あの、もしよろしければ、お茶でもいかがですか? 二度もきていただいたありがたいお客さまなので、そのぐらいのおもてなししなくちゃばちがあたっちゃう。あ、ペットボトルのしかないんですけど」
「え、でも、悪いわ。無料で見せてもらってて、そんなお招ばれまで受けちゃったら」
「お時間ありませんか?」
彼女の面が若干翳ったので、あわてて胸の前で手をふり、
「ううん、そんなことまったくないんだけど」
「でしたらぜひゆっくりしていってください。―――ほんとのところ、お客さんも全然こなくて、退屈していたんです」
「あ、そうなの……。じゃあ、お言葉に甘えて」
と口角をあげたのは、懇願する口調に気の毒さを感じたこともあるが、
『いいチャンスよ』
との囁きが、脳内に生じていたからでもあって―――。あの首吊り写真のことを訊きだす、いいチャンス。
「やった~」
彼女はパンと一つ手を叩くと、スタッフルームへ小走りで向かった。
その小さな背中にすかさず、「その前に、あの……」わたしは控えめな声をかけ、彼女の足をとめた。
「おトイレ貸していただきたいんだけど」
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