(四)

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「フルショット、バストアップ、顔アップと、いろいろな角度から何度も撮りましたから、最後は相当疲れたみたいです。だけど、それだけに充実感があるって」  それから、その撮影のためにいった様々な場所での想い出を、楽しげに披露した彼女に尋ねた。 「失敗したことはなかったの?」 「撮影ですか?」 「いえ、首吊り自体が」 「首吊り自体?」 「いわゆる、その、失敗して死にそうな目に会っちゃったとか」 「いえ、一度も。だから今でも彼女、なんの問題もなく元気にしてますよ」  返ってきたほがらかな口調は、「でも」と続けた。 「首吊り趣味の人って結構いるそうで、そんな人たちが集うサイトもあるみたいです」 「え?」 「でしょ? あたしもちょっと驚いちゃいました。  彼女もそのサイトに、首吊りの経験談や自分のやり方なんかを投稿して、同志と交流を持っていたんですって。で、そんな人たちの中で、自分で自分の首吊り写真を撮って投稿する人もいたようで、実はそれに触発されて、自分も撮りたいと思うようになったんだって、彼女いってました」  そしてその彼女は、花奈に撮ってもらった写真を、意気揚々と投稿したらしい。  首吊り写真に関し以前調べたものの中に、そんなサイトは発見できなかったと思う。見つけていれば、そんな特殊なページ、きっと記憶に残っているはずだ。それとも、探索した以降にできたものででもあるのだろうか……。  しかし、そんな疑心は彼女の台詞で消化した。 「でもそんなサイト、倫理的にまずいんじゃないかって思ったんですけど、やっぱりつくっている人たちも考えは同じだったらしくてですね、 “紹介者がいて、なおかつ厳しい入会審査を通った人しか入れず、閲覧もできない”  っていう仕組みになっているんですって」  「それって、どういう審査で、どんな仕組みなの?」 「あたしも一度訊いてみたんですけど、『ごめん、それは教えられない』って。  いくら信用する友人にも、そこは口をつぐむなんていう律義なところを持っているから、彼女も入会できたんでしょうね」  感心したような口ぶりが、その友人と接してみたい衝動をもたげた。 「そうしたら、自分も撮ってほしいっていう依頼が、ぞくそくときたんです。もちろん友だちを経由して」  彼女の声は、途端、嬉しそうなそれに変わった。
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