(四)

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 友人の話によると、サイトに投稿される写真は、ほぼセルフタイマーで撮ったようなものばかりで、みな、お世辞にも写りがいいとはいえないものばかりだったらしい。その中で、花奈の撮った写真は一段と光彩を放っていた。だからだろうと。 「もともとは、同志の人たちから、どうすればそんなに綺麗に撮れるのかっていう質問があったらしいんです。そこで彼女、信頼できる友人に頼んだって明かしたんですって」  そう説明した彼女は、その依頼を端から受けた。 「なにしろ写真の仕事なんて、ほかにありはしませんでしたから」  と、また照れを浮かべた幼顔だった。  当然ながら、相手はみな素性を隠し、こちらも詮索しないという約束が交わされた。そして、仲介役を担った友人は、その律義さからか、撮影現場へ毎度立ち合った。  また、踏み台や脚立などの機材運びにも友人は手を貸してくれたので、大いに助かったという。  撮影は、墓場や寂れた神社の裏、広域公園の木々の中など、友人を撮ったのと同じ場所で、人気のなくなる夜間に行われた。 「いくら趣味でやっているとはいえ、他人に見られちゃったら大変だから。  でも、カメラの感度、最大にしてもまず難しいと思ったので、仕方なく携帯照明焚いてたんです。だから、その明りで見つかっちゃうんじゃないかって、びくびくもんでした」  そういったわけで、友だちは見張り役もやることになっちゃって。と、楽しげに動いた口は、ほとんど大木の枝にロープを吊ってのシチュエーションでシャッターをきった、とも解説した。そして、 「夏場は虫も多くて、アベックなんかも深夜までいたりしたので、大変でした。その点、冬場はそんな心配ほとんどなかったんですけど、今度は寒さがこたえて。だから、友だちのときより、ちょっとあげたギャラ設定にしちゃいました」  と、ペロッと舌を出した小顔は―――、  このギャラリーのレンタル料は、その撮影報酬から出ているのか?   という、この際どうでもいい考えを頭にのぼらせた。が、しかしそれも、すぐ霧散した。  不思議と女性だけだった依頼者の内には、リピーターも少なからずいたという。彼女らのほとんどが、衣装や髪形を変化させて、再びの撮影に臨んだ。  するとそんな彼女たちの中に、撮影中、失神するものが出てしまった。おそらく、限界の苦しみ顔見たさに頑張ってしまったのだろう。
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