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知らず、身を乗りだすようにしていたわたしを見る彼女は、さすがに驚きを隠せずにいる。
「一緒に、ですか……」
「ええ」
言葉に自然と力が込められていた。
「……でも、今のところ決まっている依頼はないし……。それに、やっぱり部外者が同席するのは、向うも嫌がるんじゃないかと思います。同じサイトのメンバーだったらまだしも……」
そりゃそうか……。と思い直したわたしは、
「じゃあ、今まで撮った写真で、正面からのものとかは、保存してない?」
「え……まあ、あることはありますけど……」
「それ、見せてもらうことって、できないかしら?」
「う~ん……でも、やっぱり本人の許可なしには……。
友だちに頼んで連絡とってもらったとしても、まず興味本位の部外者にはNGって答えになると思います……」
申し訳なさそうな色を浮かべた彼女に、あわてて、
「そうよね、やっぱり。ごめんなさい、変なこといっちゃって」
頭をさげた。
すると、彼女の目は探るように向いて、
「もしかして、お客さんもマニアなんですか?」
「え……いや、そうじゃないんだけど……」
「マニアでもないのに、じゃあどうして? 気持ちのいいものじゃありませんよ」
「―――実は……」
うまい言い訳が思いつかなかったこともあるが、写真をやっていきたいという芸術家志望の彼女であれば、わたしの気持ちを理解してくれるのではないか……。そんな希望も働き、その忌まわしき写真を目にしたい曰くを吐露した。
―――小学校のときの体験が発端となり、ホラーを主として小説を書いていること。
―――コンテストではそこそこまでいくが、受賞まではどうしてもたどりつけないこと。
―――その要因が“リアリティーの欠如”だと、自身でもわかっていること。
―――そこであのときの衝撃を、仮に二次元の形でももう一度体験できれば、そのリアリティーの欠如を解消できるのではないかと考えていること。
要点をかいつまんで、と思っていたにもかかわらず、向けられ続けた真摯な眼差しが、気づけば詳細に語らせていた。
「そうだったんですか……」
わたしの口の動きがとまると、視線を落とした彼女はそうつぶやき、その小さな唇をそっと噛み締めた。
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