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見まわす限りギャラリー内にあるのは、パネルと、今前にしている受付テーブルだけ。その上にも、カメラなどはなかった。
「あ、どっちもスタッフルームに入ってますからご心配なく」
立ちあがりながらの彼女の返答だった。
「あ、そうなの……」
それはよかった。と安堵した胸は、しかし一方で、余計な、といえばいえる素人疑問を、つとわかせていた。
カメラや三脚など、展示会に持ってきているものなのだろうか?
はたして置いておく必要があるのだろうか?
「ロープも問題ありません。パネルまとめるために持ってきたのが、束になってありますから」
の声が、すでにスタッフルームのドアに手をかけていた彼女から届いた。その拍子に、疑いは打ち消された。―――のだが、今度は、
なんて用意がいいのだろう……。
との思いがわき―――。
ロープの存在理由はわかるにせよ、なんだか都合がよすぎるきらいも感じる。
しかし―――、
「でもだからといって、事はよきほうに進んでいるのだから、べつにいいじゃない」
と、そっと自身を諭した声に、結局は従った。
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